電子工作に最小限必要なこと・・・オームの法則 抵抗の合成(1-2)
電子工作の入門書を読むと、理論的なことや電子の挙動などの原理的な内容から始まっているので、これらに抵抗がある人も多いでしょう。
多分、オームの法則や抵抗の合成についてはわからなくても言葉を知っていると思いますので、少し電子工作に慣れてきて、必要性を感じればそのときに勉強すればいいと思います。
例えばオームの法則を知らなくても、どうにでもなりますし、それが使えると、結構楽しめて面白いものです。
しかし、たのしむための電子工作では、オームの法則やキルヒホッフの法則などを使う場面はそんなにありません。
それもあって、このHPでも、「オームの法則」と「抵抗の合成」「キルヒホッフの法則」と「重ね合わせの定理」などの内容を書いていたものを縮小しました。
ただ、計算や法則などは考え方を簡単にしたり理解しやすくする「道具」ですので、必要になったときは、しっかりと書籍で学ぶのが得策です。
オームの法則
これは前ページで使った図です。 電源の電圧とLEDの仕様(特性)から、オームの法則を用いてRの値が計算できます。
「オームの法則」を使うと、電圧、電流、抵抗のうちの2つがわかれば、残りが計算できる、すごい法則で、これは、2つの法則からなっています。
「①導線の電流は両端の電位差に比例し、その比例定数は一定で、その逆数が抵抗である」「②導線の抵抗は長さに比例し、断面積に反比例する」というものです。
文字で書くと難しそうですが、
第1法則は 「電流=電圧/抵抗」という式で表され、これが非常に役に立ちます。
第2法則は、1mでAオームの導線は、2mになると2Aオーム、その断面積が2倍になると 抵抗値はA/2オームになるという内容です。
回路においては、「常にオームの法則が成り立つ」として進めるのが基本です。
すなわち、導線などの抵抗や影響は考えずに、「オームの法則はどこでも成り立っている」とします。
ここで、電流はI、電圧はE、抵抗はRと表記されているものや、それぞれA,V,Rと表示されているなどもあリます。 いずれでもいいので、覚えやすいもので覚えるようにすればいいでしょう。 例えば、
電圧(V)=電流(A)x抵抗(Ω) から この単位を基本にしていることと、
E=IR I=E/R R=E/I
V=AR A=V/R R=V/A
などが自分の覚え方で簡単に頭に浮かべばOKですね。
V=IRとおぼえている方もいるでしょうし、また、電圧=電流x抵抗 と覚えているかもしれません。どのように覚えてもいいので、計算できればいずれでもいいでしょう。
このHPでは直流のアナログ数値しか扱いませんが、交流になると、コイルやコンデンサが抵抗のように働くのでややこしくなるのですが、直流の場合はシンプルです。
当面、私達が扱う回路では、オームの法則が正しいことと、テスターで測った値は正しい・・・ということを基準にして考えることにします。そうでないと混乱しますから・・・。
そしてもう一つ、電流が流れるときに抵抗があると熱が発生します。例えば、家庭のコンセントをタコ足にしてたくさんの電気を使うと、電線や電気器具自体の少しの抵抗でも熱が発生して火災などの危険が生じますし、1/8Wなどの小さい抵抗器やトランジスタが熱を持っていることがあるのですが、これらはオームの法則や測定誤差の原因になるのですが、多くの場合は気にしないということにしましょう・・・ということで考えていきます。
もちろん、熱は誤差要因だけでなく、部品の特性を変えてしまうので、無視してはいけないことも確かですが、考え方の順序として、オームの法則は常に成り立つことや、テスターでの測定値は正しいとしないと前に進めなくなります。
適当といい加減について
上の回路図で、LEDの電流制限抵抗を220Ωにしています。その状態でいろいろな部分の電流や電圧を測ったのが下の図の赤字の部分です。
そして、220Ωの抵抗を330Ωに変えて同じように測定したのが青字で示しています。
これを見ると、色々とおかしいところがあります。
①電圧降下の和と電源電圧が異なっている ②抵抗とLEDに流れている電流値が違う ・・・ などの小さな違いですが、このような測定値の違いはたえず出てきます。
実は、このように、これからやろうとしている電子工作にはこのような「適当」なところも出てきます。
どこの何が正しいのかわかりませんが、測定では、こういうことはいつも起こっているということを、ちょっと頭にとどめておいてください。
抵抗値も適当なものを使うことになる
上の抵抗値の例でもそうですが、抵抗器は、E系列という数列にそって作ることが決められているので飛び飛びのものしか販売されていませんし、下の写真はセットの例でもわかるように、E系列というよりも、使いやすそうなものがセットされているのが実情です。
だから、必要な場合には、合成抵抗を用いたり、電流値が小さければ、可変抵抗器(半固定抵抗器)を使って代用できます。
しかし、多くの場合は、近い抵抗器を用いることで問題は起きません。
次は抵抗の合成についての簡単な説明です。これも、必要なときに覚え直してもいいでしょう。
抵抗の合成について
ここでは、2つの抵抗を直列・並列につなぐ場合の抵抗値について見てみましょう。
これを使う場面はしばしば出てきます。
直列の抵抗値は、足せばいいだけなので、私もよく使います。 しかし、並列の計算は分数の計算なので少し大変です。
しかしこれも、やり方を覚えておいて、必要になれば計算できるようにしておけばいいでしょう。
3つの分数計算となると、見るだけでうんざりするでしょうから、「こういうこともできる・・・」という程度で見ておいてください。
1)直列
直列の場合は、足し合わせれば「一つの抵抗」と考えられるということで、これは簡単です。
直列にすれば、「抵抗値は増える」イメージが持てれば、ここではこれでOKです。
2)並列
並列の場合は、計算しなければなりませんが、EXCELを使うのもいいですし、同じ抵抗値のものが2つの場合では、例えば、5kΩであれば、合成抵抗は半分の2.5kΩになるというのを直感できるようになってきますので、これだけ知っているだけでも、かなり実用的です。
オームの法則の第2法則
オームの法則の第2法則は導線の断面積が増えれば抵抗が減り、たくさん電流が流れる・・・というイメージはわかると思います。
これもここでは説明しませんが、こういうものがあって計算できる・・・ということを知っておいてください。
これらの抵抗と電流電圧関係を一覧にすると、次のようになります。
ここでは、直列の場合は、回路に流れる電流が等しい(I=I1=I2)、並列の場合は、各抵抗器に掛かる電圧が等しい(V=V1=V2)というところがポイントです。
この考え方はよく出てきて使います。
以上ですが、記事で出てきたら説明しますし、多分、計算などをしなくてもそれなりに理解できますので、以上の説明で終わりにします。
*********これから下は、参考事項として残しました。
下に「キルヒホッフの法則」または「重ね合わせの定理」について書いていますが、私も記事を書くために手計算したのですが、簡単に計算できるようなものではありませんでした。 研究や設計場面では必要かもしれませんが、趣味の電子工作ではとくにこれを解くことはないと思いますので、こんなことか・・・と読み流していただけるだけでもうれしいです。
ともかく、この記事を書くために、何十年ぶりで連立3元1次方程式を解きました。それが解けたのもびっくりでした。 月日の流れは恐ろしいのですが、中学生で習ったことを何十年たっても覚えていたことにびっくりしましたので、私の頑張ったこととして、本記事にしないでこの記事を残しました。
キルヒホッフの法則
①電流に関する法則(第一法則) これを略して「キルヒ則①」という人もいます。
任意の接続点において、流入する電流の和と流出する電流の和は等しい
②電圧に関する法則(第二法則) これも「キルヒ則②」ともいわれます。
閉回路において、「電源電圧の和」と「各抵抗の電圧降下の和」は等しい
というものです。 ここでは、こういう場合にこのようにすれば良い・・・という例を、例題で説明します。
実は、あとに示す「重ね合わせの定理」という方法を使っても、同じ答えが求められます。
これら4つの例で、これらの電源と抵抗値が示されると、赤矢印のようにI1~I3の電流が流れて、それが黄色矢印ような流れになるとして、点Aと点Bについてキルヒホッフの法則を使うことでその電流値が計算できます。
①について見てみると、点Aでは、「流入する電流の和と流出する電流の和は等しい(キルヒ則①)」ので、I2=I1+I3 です。また、点B で見ると、I1+I3=I2 となっています。
重ね合わせの定理
この定理は「複数の電源を用いた回路に流れる電流は、それぞれの電源が単独であると考えると、その電流の和になる」というものです。
回路の半分ずつを計算できる・・・という考え方で、字で書くとわかりにくい内容ですが・・・
左辺の電源が②つある回路では、電源ごとに回路を分解して、右辺のように考えればいいというものです。これを「重ね合わせの定理」とよばれています。
この左辺をよく見ると、キルヒホッフの法則のときの①の回路と同じです。だからここでは、キルヒホッフの法則と重ね合わせの定理で、同じ答えが得られることを示そうと思います。
考え方としては、まず上側のE1だけについて考えます。
このときに、対象外の電源E2は、そのまま、それを無視して、ショートして導通しているように考えて、I1aやI1bなどををそれぞれ求めていくという方法を取ります。(この理解には結構な壁があります・・・私はよくわからないので、「そんなものだ・・・」とスルーしました)
このとき、E1に対してI1aはR1と残りが直列になっており、その残りのR2とR3は並列になっていると考えることができるので、この回路は、・・・
というように見ることができます。 そうすると、最初の図のI1aから別れていったI2aとI3aは
I2a=-[R3/(R2+R3)]xI1a I3a=R2/(R2+R3)xI1a
になります。(オームの法則と、抵抗の並列の考え方から、このようになるのですが、私はよくわかりませんでしたので、「こんなものだと考えて先に進みました)
このとき、図のようにI2aの電流の向きがその他と逆なのでマイナスにすることに注意します。キルヒホッフの法則でもそうですが、電流の向きを間違うと解けなくなります。
同様にE2の側のI1b I2b I3b を求めます。 次は、I2bが主役なので、この場合のE1はないと考えると、(この「ない」と考えるのも難しいのですが・・・)
・・・というように考えて計算します。
上のI1aでもそうですが、この図のように、回路に流れる電流値は同じで、ここではI1bが逆向きの電流の流れなので、それに注意するとともに、同様に、R1とR2の部分だけで電流の流れが抵抗の比で分流されるので、
I1b=-[R3/(R1+R3)]xI2b I3b=R1/(R1+R3)xI2b
ですので、先のI1aとあわせて、重ね合わせの電流I1 I2 I3は
I1=I1a+I1b I2=I2a+I2b I3=I3a+I3b
となって、これらが求められることになります。
難しい内容ですが、具体例で計算してみましょう
ここでは、たまたま、キルヒホッフの法則にある回路①と重ね合わせの定理の回路で同じ図がありますね。
つまり、このような回路は、どちらの方法でも解くことができるということです。
回路に適当な小さな数字を入れて考えてみましょう。

【これを「重ね合わせの定理」で解く】
これは、上で計算した式に当てはめればいいので、上で計算した順番に数値を当てはめます。ここではわかりやすいように、計算記号や単位を付けています。
I1a=2V/[1Ω+6Ωx3Ω/(6Ω+3Ω)]≒0.67A
I2a=-[3Ω/(6Ω+3Ω]x0.67A=-0.22A
I3a=6Ω/(6Ω+3Ω)x0.67A=0.45A
I2b=3V/[6Ω+1Ωx3Ω/(1Ω+3Ω)≒0.44A
I1b=-[3Ω/(1Ω+3Ω)]x0.44A=-0.33A
I3b=1Ω/(1Ω+3Ω)x0.44A=0.11A
I1=0.67A-0.33A=0.34A
I2=-0.22A+0.44A=0.22A
I3=0.45A+0.11A=0.56A となります。
【同じものを「キルヒホッフの法則」で解く】

キルヒホッフの法則では、点Aと点Bの電流の流れを考えて、第1法則を適用すると、
点A:I3=I1+I2 点B:I1+I2=I3
となり、I3=I1+I2(式1) と、これにキルヒホッフの第2法則を上下半分ずつに適用するのですが、オームの法則にアテはめて、さらに直列の抵抗となっているので、
E1=I1xR1 + I3xR3 E2=I2xR2 + I3xR3 の3つの式から、
上半分: E1(2V)=I1x1Ω+I3x3Ω (式2)
下半分: E2(3V)=I2x6Ω+I3x3Ω (式3)
となるので、この3つの式の連立方程式でI1,I2,I3 を求めるといいことがわかリます。
・・・のですが、ちょっと大変な計算でした。 それを解くと、
I1=0.34A I2=0.22A I3=0.56A
となって、上のキルヒホッフの法則で求めた結果と同じになることがわかります。
ここでは3元一次連立方程式を解くことになります。
書籍などには、「キルヒ則」といって、これがしばしば出てきます。ともかく、こういうものだということを知っておいて、必要があれば計算に挑戦すると「頭の体操」になるかもしれませんね。
ここまでで、回路、抵抗の合成、オームの法則、キルヒホッフの法則などを見てきました。このような内容は、正直言ってあまり面白くないものなのですが、書籍を見ると前の方にあって、やらなければいけない感じをもたせるのですが、実施に計算するのは意外と大変です。この記事は私の努力の結果として残していますが、お読みいただいたのならすみません。 これで終わりにします。




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