磁気に反応するホールICをつかってみる
ここでは、磁気に反応するセンサ「ホールIC」を使って、何かすることを考えてみます。このHPでは、ともかく、危険なことだけはやらないようにしながら、荒っぽい使い方であっても、使ってみることで、なにかのヒントになりそうなことを紹介しています。
初心者が使えそうな磁気センサ
磁気センサには、「ホール素子」「磁気抵抗素子」「リードスイッチ(こちらに記事)」などがあります。
ホール素子は磁気によって「電圧を出力する素子」で、磁気抵抗素子は、「磁気の方向で電気抵抗が変化する素子」、リードスイッチは、「磁気によってON-OFFするスイッチ」です。
磁気を利用すると、非接触のスイッチのような働きができますし、例えば、磁石を使ったモーターなどの回転状態が感知できるなど、様々な用途に使うことができます。
そのことから、①磁気によるON-OFF(フタの開け締め検知) ②距離測定(磁石との距離検知) ③回転状態の検出(モーターの回転位置・回転数検知) ④電流の検出(電流の磁気変化) などはこのホール素子を応用して広い用途で使われています。
ここでは、難しい理論や専門的な使い方などは別にして、趣味の電子工作に簡単に使えそうなホール素子を使った「ホールIC」の簡単な使い方を紹介します。
ホールIC
ホールICは、ホール素子にスイッチ機能を内蔵して一体化したものと考えていいでしょう。磁石(マグネット)を近づけるとON-OFFするというセンサーです。
ここでは、SK1816GのSIPパッケージという、トランジスタのように、足のついているものが使いやすいので、これを使って説明します。
上の写真のように、小さなもので、価格も@50円以下です。
3本の足は、1:電源 2:接地 3:出力 の端子になっています。
ホールICはONかOFFという、デジタルのような出力ですが、ここではそれをスイッチにして、アナログ的な使い方をします。
同じように、ホール素子を使ったリニアホールICというものがあります。
これは磁気の極性や強さに応じたアナログ電力が出力されるので、位置や角度などの検知ができることから、これはまた色々な使い方ができそうなスグレモノといえるでしょう。
ただ、この「ホールIC」は非常に安価で、ICの内部でいろいろな処理がされているので、ただ、電源につなぐだけで動作し、常温~100℃程度の環境で使うのであれば、簡単に使えてノイズの影響も受けにくいので、電子工作でなにかしようと思えば、使い勝手の良いセンサーかも知れません。
扉やフタを開けると何かが起こる。磁石を近づけると何かが起こる・・・というようなことだけでも、いろいろなシチュエーションで使えそうですし、その使い方としてはON-OFF、近接感知、回転感知、などと無限にあると考えられるので、使い方はアイデア次第でしょう。
使用例
ここでは、磁石を近づけることでLEDが点灯する回路を作ってみます。
左は原理図で、右は、今回考えてみた回路です。ホールICに磁石を近づけるとLRDが点灯します。
このにある0.1μFのコンデンサはノイズ除去のためのものです。また、B接点スイッチは、一度ONになった状態が保持されるので、消灯したいときに押すようにしています。
B接点は何もしていないときは導通しており、押すと回路が切断されるスイッチです。(押すと導通するスイッチはA接点スイッチといいます)
そして、後で説明していますが、この回路では、LEDが点灯していなくても、常時、ホールICを通じて少しだけですが電流が流れています。
磁石をホールICの印字面に近づけるとLEDが点灯します。このホールICの場合は、磁石の「N極」を近づけると点灯し、その状態で「S極」を近づけると消灯します。
NとSを交互に近づくと順次にON-OFFします。つまり、「N極」と「S極」を区別するようです。
いったん点灯すると、磁石を遠ざけても、LEDは点灯したままです。
そこで、点灯状態でスイッチを押すと(B接点なので押すと回路が切れるので)点いているLEDは消灯します。
スイッチから手を離すと、再び回路はつながって、ホールICには微小電流が流れますが、LEDは消灯したままです。
このとき、回路には7.6mAの電流が流れています。
「N極」を近づけてLEDを点灯させたときの電流は20.9mAです。
LEDは通常の2Vタイプですので、制限抵抗220Ωに流れる電流の計算値は (5-2)/220≒0.0136A なので、13.6+7.6=21.2 となるので、ほぼ計算通りの電流が流れているようです。
しかしここで、ちょっとホールICに流れる電流について注意が必要です。
これは、今回使ったホールIC(SK1816G)のデータシートの「絶対最大定格」の一部です。
供給電圧(Supply Voltage)は5Vで問題なし、供給電流(Supply Current)7.6mAで問題なしですが、回路電流(Circuit Current)は20.9mA流れています。
20mA以上は流してはいけないのですが、ここでは、0.9mAオーバーしています。 このため、電流値を下げないと、ホールICが破損します。
現実的には、長時間点灯させていてもホールICは破損しませんでしたが、ここでは正しい使い方をしなければなりません。
そこで、普通のLEDを3Vの高輝度LEDに変更して電流値を測定すると、16.7mAでした。OKです。
流れる電流の計算値は、(5-3)/220=0.009A 9mA+7.6mA=16.6mAで、実測と計算値もあっていて、これで問題ないでしょう。
普通タイプのLEDであれば、電流制限抵抗値を(市販されているものでは例えば)330Ωにすると、(5-2)/330=0.009A となり、最大定格以内に収まります。
データシートは英語がほとんどなのでわかりにくいのですが、このように必ず読むようにして安全に留意しないといけません。
これからはアイデア次第
例えば、リレーを動かしたり、モーターを回すには最大許容電流が20mAでは足りないので、トランジスタを使えばいいでしょう。
その方法としては、例えば、ホールICをスイッチにして、出力をNPNバイポーラトランジスタのベースにつなぐことでもOKですし、MOS-FETを使っても出来そうですね。考え方は、前の記事を参考にしてください。
この「ホールIC」には、今回使ったSK1816Gのように用いる磁石によって、 ①「S極・N極」を区別するもの の他に、②例えば、「S極」を近づけると動作するもの ③「S極・N極」のいずれでも動作するもの ・・・等があるようです。
今回使ったものは、N極で点灯した後に、磁石を遠ざけても点灯状態が保持されています。これとは違った機能のものもありますので、目的に合わせて選択してください。
私は、このタイプしか手持ちがありませんでしたが、このホールICもそうですが、非常に安い部品で無限の楽しみが広がりますので、いろいろなセンサを購入しておいて、いろいろ試してみると面白いでしょう。
蛇足ですが、今回は「100均のダイソー」で購入した超強力マグネットを使いました。
マグネットのN極とS極はどのように見分けたらいいでしょうか? 私は磁針(コンパス)を使ったのですが、磁針のNが北を指すので、地球の北極はS極ですね。北極のS極が磁針のN極をひきつけています。・・・ こんなことも何年ぶりでしょうか、それを思い出させてくれました。
このマグネットは少し強力すぎる感じですが、たぶん、レアアースのネオジムを使った超強力マグネットでしょう。小さなものが8個組で税別100円にも価値を感じますし、このマグネットを使うだけでもいろいろ遊べます・・・。
ここではホールICを使った簡単な回路を紹介しましたが、このHPでは、初めて電子工作を始める方が手軽に楽しめるように、アナログ、低電力、直流のものを主に扱っています。高度な理論や計算をしなくても理解できる内容にしていますので、実際に手を動かして電子工作を楽しんでいただきたいと思います。
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