楽しく遊ぶための初心者にもわかる電子工作のヒント

オペアンプの使い方 (1)オペアンプと電源

電子工作でオペアンプを使ってみましょう。

オペアンプは、直流増幅用で開発されたものですが、交流でも使用されているし、アナログでは大きな増幅ができる素子として、また、デジタルでは、論理演算増幅器として幅広く用いられています。 そして、バイポーラトランジスタやC-MOSを用いてIC化されていて、様々な用途に使われています。 

ここでは、主に、直流低電圧低電流で、電子工作に使えそうな内容の初歩的な内容ですが、紹介します。

ここでは、LM358Nというオペアンプを使います。 これは、汎用オペアンプとよばれる、かなりラフな使い方ができて、単電源で安価・・・というもので、ここでは「自分で何かに使ってみよう」という場合の基礎的な内容です。

「オペアンプ」という名前を聞くと、何か難しそうに思ってしまう方も多いかもしれませんが、もちろん、製品として販売するものを作ったり、みんなに紹介できる内容となると、それなりに広い知識がいるものの、電子工作での使用を考えるのであれば、気軽に、誰でもが使えるもの・・・と思っておいていいでしょう。

ここでは数ページに分けて、基本回路で動作させてみる・・・という内容を紹介します。 もちろんここでは、主に、アナログ、直流、低電圧低電流の内容で、オペアンプがよく使われている、音響関連や交流、高周波、論理回路については、ほとんど触れていませんが、基礎的なことがわかれば、とっつきやすいと思います。

1)オペアンプの簡単な紹介と単電源での使用について(このページ)
2)コンパレータの仕組みを見る(→こちら
3)オペアンプの増幅回路(→こちら
4)オペアンプを使った発振回路(→こちら

私自身も専門家でないのですが、目的は、「回路を組んで動作させること」ですので、実際に基本回路を組んで、実際の電子工作にどのように使えるのかを考えながら説明していきます。 ヒントになりそうなことがあれば利用いただくといいでしょう。

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単電源で使用できるオペアンプ LM358N

オペアンプの概要をあわせて見ながら、簡単に、このLM358Nについて見ていきます。

オペアンプの図示記号  オペアンプのピン位置

「オペアンプ」は、このような左図の記号で表されます。 右図はここで使う、LM358Nの外観です。 この形状をDIPといい、8つのピンをブレッドボードに挿して使用できますし、下で示すICホルダーを使って、ユニバーサル基板に配置できます。

幅は1cm程度の小さな部品ですが、その中に2つのオペアンプが組み込まれています。

オペアンプの内部結線例LM358Nの結線図

記号図からは、プラスとマイナス端子(ピン)になにか(例えば電圧)を入れると、オペアンプが何かの処理をして、右側に何かの結果を出す・・・という「論理記号」のような形なので、やはり「オペアンプは、アナログコンピュータのために開発された・・・」という感じがしますが、オペアンプを特殊なものと考えると使いにくくなるので、安くて使いやすいアンプのパッケージ・・・という程度に考えておくといいでしょう。

このLM358Nは、「汎用オペアンプ」に分類される、幅広い用途に使える、バイポーラタイプのICで、ラフに使える上に、単電源で使えるところが便利なICです。

この「単電源」については、後で説明しますが、多くのオペアンプはプラスとマイナスの「両電源」が必要なものも多いのですが、LM358Nは、このHPで使っている 5Vの電源だけで作動します。(両電源で使用することもできますが、ここでは、説明しません)

一般的に、オペアンプのIC構成は、バイポーラとC-MOSタイプがあり、バイポーラタイプは、高速低雑音という特徴があり、種類的には、C-MOS(FET)タイプの、電圧制御、低消費電流という特徴を生かしたオペアンプのほうが多いのですが、静電気で破壊しやすい事もあって、取り扱いに注意が必要な点があるので、ここでは、安価(@50円以下)で使いやすいオペアンプLM358Nを使っていきます。

このあとのページでは、オペアンプについて、バイポーラトランジスタでみてきたように、スイッチのような使い方のコンパレータ、増幅作用、発振回路などについて基礎的なことをみていきますが、オーディオアンプなどの交流分野はここでは説明していません。

オペアンプにに限りませんが、交流を扱うには、周波数特性を考えたり ノイズ問題や安定性などを考えないといけないので、別の記事でオーディオ用のオペアンプを使った記事を紹介する予定で、ここでは、初歩の電子工作に使えるような基本的な内容だけをみていくことにします。

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ここで使うオペアンプLM358Nは驚くほど価格も安く、私も、4つを購入しており、一連の実験中に、配線を間違って、変な電圧をかけてしまった事もあったのですが、破壊しないタフさがあるので、みなさんも、気にせずにいろいろ試して使っていただくといいでしょう。

ブレッドボードへの取り付け 印をつけるとわかりやすい

ブレッドボードに回路を組む場合は、写真のように、真ん中の溝の部分に直接挿して使いますが、ICを傷めないように、8Pinソケット使うのもいいでしょう。

ただし、市販のソケットは、足が短いので、抜けやすいので、私は足を伸ばす追加工をしています。

慣れてくると、ICソケットを使わないで、直接挿すことが多くなると思いますが、その場合も、私は、ピンの位置がわかりやすいように、写真のようにボードに印をつけています。 これでかなりわかりやすくなります。(写真は14Pin用で印を付けています)

ソケットに足をつけたものはこんな感じです。

今回使うオペアンプLM358Nとブレッドボード取り付け用コネクター

ちなみに、購入時にはICは黒いスポンジに挿してある場合が多いようですが、これはICの静電気対策用の導電スポンジで、使わないときには、これに挿しておきます。 

このIC(LM358N)はバイポーラの汎用タイプで、比較的ラフに扱ってもいいのですが、一般的には、MOS-FETを使ったIC部品類は、特に体に帯電する静電気を嫌いますので、普段から、どんなIC部品にふれる場合にも、静電気除去をしてからふれる・・・ということを頭に叩き込んでおくのが無難です。

ICに触る前には、大きな金属や鉄製の窓枠などに触れると、かなり除電されますから、さわる前には、「除電する癖」をつけておきましょう。

【参考】オペアンプを初めて購入する場合は・・・

オペアンプを購入しようとして、例えば、WEBで「オペアンプ」を検索すると、ずらずら・・・と、いろいろな型番が出てきて、なにがいいのかを迷うかもしれませんが、一つの考え方は、「誰かの真似をする」のが早道ですので、まず、このLM358Nを購入して、使い方に慣れるのも一案です。

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この型番LM358Nはポピュラーな型番なのか、いろいろな方が記事にされています。 

雑音や歪が多くてオーディオ用には使えないという記事もあります。 当然、どんなオペアンプも長短所や向き不向きがありますから、オーディオには、オーディオ用のものを探して使うといいでしょう。

ここでは、オペアンプがどういうものなのかを知る目的ですので、「これでないといけない」というものでもありませんから、「汎用」「単電源で使用できるもの」「安価なもの」「手持ちの電源が使えるもの」などから探していくといいでしょう。

このような安価なオペアンプを使いながら、いろいろなことに触れて知識を広げていけばいいので、最初から、いろいろな注意点や制限事項などの細かいことを考えて完璧にしようとすると、難しくて扱いにくくなってしまいますので、慣れることから始めるということでいいと思います。

このようにこの記事は多少ラフな文章で、専門家が書くものではないので、そういうつもりで読んでください。

実験にはブレッドボードを使います

ブレッドボードを使うと、簡単にパーツを抜き差しできるので、非常に便利ですので、ここに回路を組んでみましょう。

さて、このLM358Nの小さなICの中には、2回路のオペアンプが入っています。

オペアンプLM358のピン配置図もう一度、LM358Nのピンの配置図

ここでは、2つのオペアンプのうちの片側1つを使うのですが、1・2・3のオペアンプ部分と、電源の4・8という5つのピンを使って、ICソケットを使う場合は、こんな感じです。

ブレッドボードでのコネクターの取り付け位置
回路の結線が終わってから、このソケットとオペアンプICの凹み位置を合わせて差し込みます。

このLM358Nは、タフで、静電気や取り扱いに強いので、直接にブレッドボードの真ん中の溝部分にさして使うといいでしょう。

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初心者にわかりにくい「電源(単電源・両電源)」について

オペアンプは、所定の電圧を加えないと動きません。 しかし、一般的には、オペアンプに給電する電源表記は、「煩雑にならないように、一般的には書かない・・・」というために、回路図には電源の供給については、書いていない場合がほとんどです。

そのために、回路図とは別に、オペアンプに、どのような電力(特に電圧)を供給するのか・・・を確認しておく必要があります。 単電源か両電源か、最大何ボルトまで使えるのか、どの端子に供給するのか・・・などを、データシートで確認しておきます。

LM358Nのデータシートの「絶対最大定格」を見ると、「32V」となっています。 単電源の0~32Vで使用できるということですから、ここでは普通の5Vの電源を使います。±15Vと書いてあれば、単電源ではなく+15Vと-15Vの両電源が必要なオペアンプということです。

電源電圧以上の電圧が取り出せないのですが、5Vの電源でも、5V以上の電源が取り出せないだけで、特に問題はないでしょう。

ただ、後で実験しますが、単電源も両電源も、電源電圧を超える増幅はできませんし、電源の電圧より低い電圧しか出力されません。

電源電圧まで出力するオペアンプもありますが(「レールツーレール」といいます)、それは特殊なもので、もしも、高い電圧の出力が必要な場合は、電源電圧は5Vではなく、もっと高い電圧の電源を用いないといけないことになります。

回路図には、電源の表記がない場合が多いです

下の最初の図(上左)のように、回路図には電源の位置が示されているものもありますが、普通は「表記されていない」と思っておいてください。

ピンの位置と表示を確認して、オペアンプICを動作させる場合には、そこに電源を接続して動作させます。 最初のうちはわかりにくいと思いますが、いくつかの具体例を示していますので、慣れていくようにしてください。

WEBにあった電源図示例WEBの図より

上に3つのオペアンプICのピンの位置図で、2つ目のLM358N以外は、+と-があるので、両電源で動作させるオペアンプです。

両電源と単電源について

オペアンプは、両電源で使うものと単電源でも使えるものがあります。普通は、両電源のもののほうが一般的です。

この電源については、知っている方は「当然なこと」と思われるかもしれませんが、この「オペアンプを動かすための電源」については、最初、私が全くわからなかったので、あえてこれを取り上げています。(余談ですが、私の息子は、高校でオペアンプの実習をしたらしくて、「当然」のように知っていました)

オペアンプのデータシートでピンの配置図を見ると、上のように様々です。

そこに、「V+」「V-」「GRD」などがありますが、これが電源を接続する端子です。 ここにデータシートに指定された範囲内の電圧を供給します。

LM358N の場合は 「V+とGND」となっていますが、その他の型番では、「V+とV-」と書いてあるものがあります。

V+、V- とあるのは、「両電源」が必要なオペアンプです。

この「両電源」がわかりにくいと思いますが、両電源とは、プラスとマイナスにGNDが加わったもの で、例えば5V両電源と言えば、+5Vと-5VとGND の3つの端子が必要なのですが、上の両電源のオペアンプを見ると、GNDの端子がありませんが、下の図のような回路にして使います。

つまり、普通のプラス・マイナスの電源(例えば乾電池)が「単電源」ですが、それを2つ用いて、下の図のようにして両電源を作ります。

両電源の電圧は等しい正負電圧を用いて、例えば+12Vと-12VとGNDを結線します。 プラスのもう一方はマイナス端子ではなく、GND端子ですから、マイナスの反対側もGNDということになります。(下図のようになります)

両電源のものでも、V+とV-とGNDが示された図とGNDがない図がありますが、オペアンプの端子にGND端子がない場合には、プラスとマイナスの反対側は回路に共通のGND(アース)につなぎます。

文章で書くとわかりにくいのですが、下図のような感じです。 

通常は電源回路は図示されないので、このような電源の回路は省略されていることを、しっかりと覚えておいて、慣れていくようにしてください。

さらに、次に説明するように、回路に書かれていなくても、品質の良い電源を供給するのが無難なので、少なくとも、0.1μFのパスコン(バイパスコンデンサ)をつけることを意識しておいてください。

両電源と単電源の考え方回路図

(参考)LM358Nは単電源だけでなく、両電源でも使うことができます。(どのような単電源のオペアンプも、両電源で使うことができますし、特性も優れているとして、両電源で使う方もいます) 

単電源仕様のオペアンプを両電源で使う場合は、GND端子に負電源を入れ、上の図のように、別に共有のGNDを設けるのですが、使い勝手は、単電源のものは単電源で使うのが便利です。 

単電源では、V+にプラス電源、GNDにもう一方の電源(マイナス側)をつなぐだけです。 乾電池ではプラス極の反対側はマイナスですが、マイナス側というと混乱するかもしれないので、プラスの反対側はマイナスとは呼ばないで、GND(グラウンド=アース)・・・ というようにするとわかりやすいでしょう。

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オペアンプに加える電源の「質」が重要

オペアンプは大きな増幅ができる反面、予期しない発振が起きたり、電源から出る、わずかな雑音を増幅してしまう恐れがあります。

そのための対策としては、電源にコイルやコンデンサ(パスコン)を入れて、それらを事前にできるだけ除去しておく対策をしておくことを心がけておきましょう。

コイルについては、発振の周波数に合ったものを使わないといけないので、インダクターの値を決めるのは難しいのですが、少なくとも、下のように、コンデンサによるノイズ対策は忘れないようにしてください。(このHPの内容は試験的なものなので回路図中にはいれていませんが、実用回路では必須です)

電源のノイズ対策例

最初は単電源で使えるオペアンプを選ぶのがGOOD

このように、オペアンプを初めて使う場合では、使い慣れていない方は特に、「単電源で使用できる」というものを選ぶと使いやすいでしょう。

もちろん、ここでは説明しませんが、単電源のオペアンプを両電源で使うことも、また、両電源のオペアンプを単電源で使うこともできますが、始めのうちは、特性を十分発揮させるためには、データシートに従った電源を使用する ということを基準にするのが無難でしょう。 

次のページでは、オペアンプLM358Nを5Vの単電源で動作させるのですが、理屈や原理の説明はなるべく少なくして、「こうするとこうなる」というやり方にして、オペアンプのスイッチ的使い方で、指定する電圧でON-OFFさせる「コンパレータ」について見ることにします。

 →次のページ:オペアンプの使い方(2)コンパレータ

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