DCモーターは電子工作での楽しいアイテム
電子工作や模型の工作では、DCモーターはよく使います。 小型のDCブラシ付きモーターは100円程度から購入できます。 そして、なんといっても、加える電圧によって簡単に回転数が変えられるので、いろいろな場面で使えます。
このHPは、なんでもやってみようという趣旨なので、専門的な内容ではありません。工作に使えそうでヒントになるものがあれば利用いただけるといいので、ともかく、実験したことを記事にしているだけのものですから、正確さを期す必要があれば、これを参考に、自分で確認いただくようにお願いします。
最近の電子工作では、マイコンと組み合わせて、ロボットの手足などを動かすことなどの記事も多くなっているので、ステップモーターやサーボモーターなどもよく取り上げられていますので、このDCモーターだけでは少し物足りないのですが、それでも、このモーターが模型などの工作の基本ですし、小さなブラシ付きモーターを自由に使えるようになるだけでも、結構面白みがあります。
ここでは、あまり難しいことは抜きにして、基本の基本として、DCモーターの使い方や、「モーターってこんなモノ」・・・という程度に見ていただくといいでしょう。
ブラシ付きのDCモータ
ここでは、どこでも手に入るDC小型モーター2種類を用意しました。
ここで使用しているRE280はマブチモーター製ですが、FA-130 はメーカー不明の無印の製品で、どうも、マブチ製のFA130 とは仕様が異なるようで、軽やかすぎるくらいに静かに回転しています。 WEBを見ると、マブチ製以外のモーターもたくさん販売されていますので、特性はメーカーによって異なっていると考えておくといいでしょう。
この表はマブチモーターのカタログから抜粋していますが、FA130の2種類のMODEL(FA-130RA-2270とFA-130RA-18100)について掲載されています。
PRここにある、「NO LOAD」は無負荷の状態、「AT MAXMAM EFFICIENCY」は最大効率の状態、「STALL」は負荷を強めて回転が止まった時の状態の数値で、いずれも1.5-3V電圧で、乾電池の使用を想定したモーターです。
写真の2つを回転させてみると、FA-130は小さくて、回転も静かで、すばしこい感じで、RE-280RAはどっしりとした感じで回っています。
ここでは、この変わり種の FA130型 を含めて、DCモーターについて紹介します。
PR同じ型番でも、各社の仕様は違っています
私の手持ちのものは、形は FA130 ですが、仕様はマブチモーター製のものとは別物のようです。
私の実験には適していて、結果オーライでしたが・・・こういう仕様の異なる同形状の製品もあることを知っておいてください。(FA130型や、FA130相当・・・などと表示されています)
手持ちのFA130型(ここではFA130型としています)を無負荷で回転させたときの電流を測定すると、2Vのとき27.7mA、3Vで30.6mA、3.5Vで31.4mAで、(後で出てきますが、)少し負荷をかけても、100mA以下で、消費電流は、カタログの数値よりも格段に小さい電流量で気持ちよく回ってくれています。
ためしに、タミヤのギヤボックスに付属のFA130型の電流測定しますと、1.5Vで200mA 3Vで260mAでしたので、これは、マブチのカタログに近い値でした。
【参考】TAMIYAさんではいろいろ工作に使える商品を取り扱っていて、電子工作でもモーターと合わせて使えそうなものがありますので、HPの商品群を眺めていると、何か使えそうなものがひらめくかもしれません。
このギヤーボックスに付属のモーターは、説明書には「FA130 TYPE」と書いてあり、メーカ名は無印ですが、測定した回転中の電流値はカタログの値に近いものです。
左がギヤーボックスに付属のFA130タイプ、右が私の使用品の無印FA130型で、外観形状は同じですが、全く仕様が違う・・・というものです。
また、マブチ製のRE-280RAを無負荷状態で測定すると、2Vのときの電流値は141mAで、3Vのときは176mAで、回転数はカタログ値に近いのですが、軸に負荷をかけてみても、カタログのあるように、1Aを超えません。
PR・・・というように、このあとの記事は、マブチ仕様のモーターでないのですが、この低消費電力のFA130型を使って実験することにします。
当然ですが、モーターは発電機にもなります
英語でエンジン(Engin)は発動機、モーター(Motor)は電動機ですが、電気で電動機を回すか、回して発電機で電気を起こすか・・・の違いです。 そして、基本構造は、同じ仕組みです。
発電機として、水車や風車のように風力や水力でDCモーターを回すと発電するはずなので、その様子を見てみましょう。
2つの小さなモーター(手持ちのFA-130型の低電流タイプのもの)を2つジョイントして片方を回転させたときに、もう片方の電圧を測ってみました。
電動機側の電圧(負荷電圧)をあげていくと、回転数が上がっていきますから、それに伴って、発電する電圧も高くなっています。
負荷電圧と発電電圧はこの電圧範囲内では、ほぼ正の比例関係にあるようです。
何か変ですね。 発電されている電気は「交流」のはずですが、テスターで直流電圧を測っていて、その時の数字がマイナス表示になっていますね。 このマイナスは、結線が逆ということなのですが、それでも、何かおかしい感じがしますね。
これは、この後で取り上げます。 ここでは、たくさんエネルギーを与えると、たくさんの電気が出てくる・・・ということだけを見ておいてください。
PR発電されている電気は・・・
元になるモーター側は直流で回転させていますが、反対側の「発電機側」に発生する電圧は、内部のローターが回転して磁界を切ることで発電しているので「交流」のはずですですが、その出力電圧をオシロスコープで見ると変な波形です。
非常に回転数が高いので、直流に近い脈流のようです。
そこで、ダイオードを直列に入れて、出力を半波整流したのですが、波形はほとんど変わりませんでした。
このモーターは3極モーターで、さらに、ブラシがあるので、こんな形の波形になるのでしょうか? ともかく、このような波形のために、上のグラフで直流電圧として表示されていたのかもしれません。
これには、いろいろな疑問が残りますが、ここでは、出力の状態を見ただけのことですし、上のグラフについても、単に、でてきた電圧をDCレンジで測定したままの値ですが、ともかく、何らかの電気が、発電されている・・・ということがわかります。
これを深く見極めるのは、私自身無理ですので、ただ、「発電できた」・・・ということだけを見ておいてください。
電圧を上げれば回転数が上がる
次に、モーターに加える電圧を変えて、回転数がどうなるのかを調べようとしました。
回転計がないので、タミヤのギヤボックスNo.167を利用して、ギヤーで速度を落として、運動軸の回転数を数えることで、毎分の回転数RPMを算出しています。
回転数についても、2つのモーター(FA130型の手持ちのものとギヤー付属のもの)で、大きく値が違うので、両方を示しました。
青色の線が、手持ちのFA130モーターで、赤色がタミヤのギヤボックスに付属のものです。
このように、電圧を変えてみたところ、この図のように、電圧を上げると、回転数が上がります。
このことから、電圧を変えることで、何かを動かす場合に、電圧によってスピードが変えられるということですね。
消費電力との関係は?
ちなみに、その時の消費電流を見てみると、次のようになりました。 これらの測定は、可変電源を用いて電圧を変えて測定しました。
電圧をあげれば、回転数が上がるので、当然、多くエネルキーを消費することになって、電流値は上昇するので、電流値と回転数は相関があってもいいはずですが、不思議なことに、手持ちのFA130は消費電流値は変わっていません。
もちろん、消費電力量としては、電力=電圧x電流なので、電流は増えていなくても、回転数が上がれば消費電力は増えていますので、この結果は問題はないのですが、言い方を変えれば、手持ちのFA130は、かなり優秀なモーターといえそうです。
PRトルクとの関係・・・なども必要なのですが、これまでで言えることは、
①DCモーターは電圧で回転数が変わる ②電流値と回転数の傾向ははっきりしていない・・・ ということがわかりました。
すると、この後のページで、電流が制御できるバイポーラトランジスタを使って、回転数を変えることを考えていましたが、電流値で回転数を制御するのはちょっと難しい感じ ・・・が見えてきました。
さらに、メーカーによって、こんなに作動状態が違うと、実際には困ってしまいます。
FA130モーターの適正電圧は1.5~3V となっていますが、回転の感じを見ていると、タミヤの付属モーターは3Vでは目一杯の感じなのに対して、低電力の手持ちのモーターは、まだまだ余裕で、(ここには示しませんが) 電圧を上げればまだまだ回転数が上がります。
この測定状態は完全な無負荷ではなく、ギヤボックスを回している軽い負荷状態です。 しかし、同じFE130で購入したもの2つでも、全く消費電力も回転数も違っているのには驚きます。
このことから、モーターを使うときには、このあたりの違いを知っておいたほうがいいかもしれませんし、しっかりとした関係を知りたいのなら、データシートのある「マブチ製」を使うのが無難ですね。
たとえば、レーシングカー模型などの高速運転が必要なモーターは、無理をさせて仕様以上の高い電圧をかける場合もあるのですから、このあたりは、モーター選びは、勝負に勝つための大きな要素となるでしょうから・・・。
ただ、高い電圧をかけると、発熱してモーターを痛めるなどの問題もあったり、トルクの強さも関係するはずでしょうが、ここで使った低電力のFA-130は、使い方によっては、かなり優秀なモーターとして使えるのかもしれません。
発電量は大きいモーターほど大きい
大きなモーターは回すための消費電力は大きいのですが、この逆の、回転させた時の発電能力も高いのだろうと推測できます。
水力発電所や火力発電所では、水や蒸気によってタービン(発電機)を回して電気を取り出しています。つまり、自然エネルギーを電気エネルギーに変えています。
安定した電気を発電させるのは簡単ではありませんが、発電量について、もう少し見ていきたいと思います。
モーターの大きさと発電量
モーター2つの組み合わせで、「FA130-FA130」の場合と、「FA130-FA280」の場合で、電圧や電流がどうなるのかを見てみました。
発電側の電圧と出力側のショート電流を測定して電力を比べています。 本来は、10Ω以下の抵抗を付けて測定するのがいいようですが、小さな電流なので、ショート電流で良し・・・としました。
結果は、加える電圧を上げると回転数が上がり、発電量が増えています。
モーター側の電圧が上がると、モーター側も発電機側も回転数が上がります。そして、結果として、発電電力量が電圧の上昇とともに増えます。
これで見ると、やはり、大きなモーターは、小さいモーターに比べて消費電力も大きいし、発電量も大きいことがわかります。
あらためて、ここで、モーターの一般特性についてみてみましょう。
モーターの特性について
モーターに加える電圧で回転数が変わる事がわかりました。
トルクについては、使用説明書には下のグラフが掲載されています。
「電流が増すとトルクが上がる」「回転数を上げるとトルクは下がる」「電流に対する効率の良いところがある」・・・ということが読みとれます。
PR一般的には、下図のような電流、トルク、回転数の関係の図をよく見ます。
これもわかりにくい図ですが、右上がりのピンクの線は、消費電流が増えると、トルクが上がるという関係です。
負荷と回転数の関係では、最大の回転数でトルクは最小で、回転が止まる直前で、トルクは最大である・・・ということが示されています。
また、付加している電圧を下げると、回転が下がり、トルクも下がります。
しかし、このグラフでは、指定範囲内の電圧であれば、回転数を変えた時のトルクや消費電流の変化する「傾向」はわかりますが、往々にして知りたい「電圧を変えたときの回転数の状態」「極限の回転数の条件」や「最も負荷に耐えられる条件」などは、このグラフからは、よく分かりませんから、これらは自分でやってみて、その特性をつかむということになります。
つまり、レーシングカー用モーターなどのように、指定外の電圧をかけたり、最適なギヤ比を使うなどのチューニングノウハウが入り込む余地があるといえるのでしょう。
繰り返しになりますが、FA130を使う場合でいえば、推奨電圧が1.5から3Vでは、電圧を上げると回転数が上がり、トルクも上がります。 馬力が欲しかったら、電圧を高くすることですが、これは、常識のイメージと合致しています。
そして、負荷が増えて回転が止まった時に最大電流が消費される状態になります。 つまり、電圧をかけても、もしもそのときに回転が止まっていると、最大電流が流れる・・・という状況になります。
また、消費電流が増えるとともに、負荷(トルクの大きさ)が増えるので、通常は、電流を増やして力強く回転させる・・・ということですが、それには、加える電圧を高める必要があります。
この、電流を増すために電圧を上げる・・・という表現はわかりにくいのですが、電圧を上げないと電流を流す余裕が出てこない・・・ということです。
これを言い換えると、電圧を上げると回転が上がり、その時には、以前より電流が増加しており、もしも、電圧を上げても回転が上がらなければ、トルクが低下しているということになります。
・・・ これらのことがこの図から読み取れるということです。
ただ、モーターを使おうとした時に、まず、「無負荷回転数とその時の電流値」「最大トルクと最大消費電流」などでモーター選びをしますので、これらはカタログの表にあります。
しかし、むしろ、ほしいプラスアルファの数字としては、「すごく力を出したい」「できるだけ高速回転させたい」というときの条件ですが、どうもこれらの特性は仕様書には書かれていないことを知っておきましょう。
だから、レーシングカーなどで極限の能力を引き出そうとすると、電流値、トルク、回転数などを自分で測定して、さらにその最良点を見つけ出す・・・という経験と努力が必要になるのでしょう。
PRさて、次に、DCモーターの回転速度と回転方向を変える方法を見てみましょう。
回転を反転させるにはプラスマイナスを入れ替えます
DCモーターは、加える電圧の極性(プラスマイナス)を変えると反転します。
例えば、ロボットの腕を上下させる場合や進行方向を変える場合などですが、DCモーターであれば、電源のプラスマイナスを入れ替えれば反転します。
これはわかりきったことですが重要なことです。 実際の方法は、・・・
①電池(電源)を2つ用意して、スイッチを入れた方の電圧が加わるようにすれば、任意の方向に回転させることが出来ます。
両方同時にスイッチを押すと、回路中でショート(短絡)します。そのために、a接点(押すとスイッチが入る)とb接点(押すつスイッチが切れる)の連動スイッチを使うといいかもしれません。
電池を入れ替えるイメージ①
②電池(電源)を2つ用意する場合は、次のような切り替えスイッチでも同様の正逆転操作ができます。この場合も、スイッチに中立の位置があるほうが、モーターに負担をかけないようになりますね。
電池を入れ替えるイメージ②
③電源を1つにしたい場合は、2回路2接点スイッチを使えば、次のような回路で正逆転ができます。
スイッチで電流の流れを切り替えるイメージ③
持ち合わせのスイッチを使ってこの回路の確認をしてみました。
ON-OFFスイッチはつけていませんが、回路図にあるように、動作用のON-OFFスイッチを付けるか、または、6Pトグルスイッチ(2回路2接点・中点つき)というスイッチを使えば、中立の時にモーターが停止しますので、これで簡単に回転を切り替えることができます。
鉄道模型で、電車の方向を変えるのを、1つのスイッチだけを使ってやっていたのは、このような方法ですね。
Hブリッジによる方法
また、「Hブリッジ」と呼ばれる、4つの単機能スイッチを使って、反転動作をさせる方法があります。
一般的には、モータードライバーICを使うのですが、モータードライバーはトランジスタのスイッチ機能を利用しています。
モータードライバーの例
【Hブリッジ回路】
ここでは、ICを使うのではなくて、ICの原理と同じですが、スイッチを4つ使って回転を変える考え方でHブリッジの状態を考えてみます。
通常は、MOS-FETトランジスタなどのスイッチ機能を使って、「モータードライバー」として製品化されているのですが、その原理は、下のようにIC内部でスイッチを切り替えて、それによってDCモーターの回転を切り替えるようになっています。
(注) このブレーキ機構ですが、DCモーターは、電圧がかからない状態(ストップした状態)でその位置を維持することが難しいので、負荷をかけた状態で静止させる場合は、何らかのブレーキ(機械的なものか電気的なもの)などで一定位置に固定する必要が出てきます。
この図のような機械的なスイッチでは、電流が短時間ショートするなどでうまくいかないのですが、ICなどは瞬時にそれを切り替えてバランスを取りことができるために、うまく電圧がかかった状態にしておくと、トルクが生じて、その位置が保持できるようになっています。
この位置保持の問題も重要です。 DCモーターでは保持力が弱く、安定しにくいので、ステップモーターを使って、ロボットのアームなどを操作するのが一般的になっています。
モータードライバーについては、別にページを変えて紹介していますので、そちらをご覧ください。
DCモーターは楽しめる・・・・
電圧を変えるだけで回転数が変えることができるDCモーターは、安価で使いやすいこともあって、色々な使い方ができそうですね。
このように、DCモーターは低電力で非常に高速回転なので、変速機を使うことですごく大きなパワーを出せますし、レーシングカーのように、寿命を考えずに高電圧を加えて高速化できるなどの、様々な工夫をして使われていますので、自分でアレンジを加えて使ってみると面白いでしょう。
先にも紹介しましたが、タミヤのWEBショップ のHPには、楽しそうな商品がたくさんあります。何かのアイデアが浮かぶかもしれません。
次は、モーターで、ちょっと気になったことを取り上げます。
停止状態からゆっくり起動するのは難しい
DCモーターは、加える電圧を変えれば回転数が変わりました。
動いている状態で回転数を変えるのは、電圧を変えることで簡単に制御できるのですが、停止状態からゆっくりと回転し始めて、その後に定速回転させるような動作は、意外と難しいのです。
これを次のページ(→こちら)でやってみようと頑張ったのですが、結果は、私の考えたすべてが「失敗」でした。 (唯一、高電圧のパルスを加える方法だけがうまくいきました)
連続的に電圧を変える、安くて簡単な方法は、トランジスタを使って、ボリュームなどで無段階に回転数を変えることができそうな気がしたのですが、低速で動き出すときに大きなトルクが必要になるので、スムーズに動き出すようにするのは意外に難しいことなのです。
うまく行かなくても、やってみて失敗を積み重ねるのも楽しみの一つですので、次のページでその「低速起動」の失敗事例を紹介します。
長くなりましたので、ページを変えます。
→ モーター記事の続きへ(うまく行かなかったトランジスタでの変速)
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