電子工作に使うバイポーラトランジスタ
ここではNPNバイポーラトランジスタを電子工作に使う場合を考えてみます。
【注】このHPの記事は、電子工作の初級者用向けで、直流の低電圧・低電流のアナログで実際に動かしてみたものを扱っており、専門的な理論や大きな電力、交流、高周波、デジタル回路、危険を伴うものは扱っていません。「自分で何かができる」ように、実際に回路を組んで、動作させた様子を説明している内容で、専門的な内容ではありません。
ここでは、トランジスタを使って電流コントロールする「増幅」について、NPNバイポーラトランジスタ2SC1815を使って様子をみていきます。
もちろん、この型番2SC1815でなくても、いろいろなバイポーラトランジスタがつかえます。 互換性については次のページで取り上げています。
この「増幅」とは、小さな電流の変化によって大きな電流の変化をさせることで、2SC1815は主に電流を増幅する用途やスイッチング動作用に使用します。
「増幅」という言葉から、小さな電流をトランジスタに流すと、大きな電流に変えるというイメージを持つかもしれませんが、そうではなくて、小さな電流をトランジスタに流して、それをコントロールすることで、電源から大きな電流を取り出す・・・というのが「増幅作用」です。
また、もう一方のトランジスタの用途の「スイッチング」は、「無接点のスイッチ」のような作用です。 これは、小さな信号をトランジスタでコントロールして、無接点で大きな電流をON-OFFする・・・という動作をトランジスタで行います。 スイッチングの用途では、FET(電界効果トランジスタ)が多く使われるので、そのページで説明します。
その他で、「ダーリントン接続回路」について知っておくといいので、こちらで取り上げています。 ダーリントン接続は、オペアンプなどに利用されていて、2つ以上のトランジスタを連結させて、非常に大きな増幅をさせる方法です。
それらのうちで、このページでは、よく用いられるNPNトランジスタ2SC1815で基礎的なことを知って、型番の違う、ほとんどの電力増幅用トランジスタも、同様に使えることを見ていきます。
PR近年は、便利に使えるIC(集積回路部品)が多く出回っています。 しかし、簡単な回路を実験したり、大きな電力の増幅用には、まだまだ、トランジスタの出番が多いので、トランジスタの基本を理解しておくと役に立ちます。
バイポーラトランジスタとは
バイポーラトランジスタは、NPN・PNPの2種類があり、N型とP型の2種類の半導体を組み合わせた構造によって増幅作用ができるようになっています。(ここでは、原理や理論にはふれません)
電子素子としては昔からある種類のトランジスタですので、「トランジスタ」といえば、このバイポーラトランジスタを指しています。
ここでは、低電力増幅用の、ポピュラーで安価なバイポーラトランジスタを使って、LEDを点灯させる回路をつくって、トランジスタの特性の見方や選ぶときの考え方などを見てみることにします。(LEDについては、こちらで6ページにわたって紹介しています)
これが、このHPで使おうとするNPNタイプの 2SC1815 です。本体には、「C1815」と書いてありますが、「C1815」でWEB検索しても、2SC1815 が出てきます。
その下の「GR8C」のGRは電流増幅率の等級、8Cはメーカーの鑑別コードのようですが、これらの表示については、私も詳しいことはわかりませんし、このHPの内容で使う場合は、「型番(この場合は2SC1815であること)」が分かれば、それ以上は必要ない情報と考えていいでしょう。
PR2SC1815と同様の用途のトランジスタの種類はたくさんあります。 それらは、特性が少しずつ違っていて、別々の型番になっています。
その中から最適な物を選ぼうとすると結構難しそうですが、データシートに「低周波増幅用」となっていて、用いる電源電圧や取り出す電流の大きさなどの、いくつかのポイントを抑えておけば、このHPで扱う電子工作では、ほとんど気にしないで使える・・・と覚えておいてください。
これは「データシートの絶対最大定格を超えないように使う」ということになるのですが、それを、順に説明します。
なぜ 2SC1815 なのか?
2SC1815 を使う理由は、多くの記事がこれを使っている、ポピュラーなトランジスタだから・・・というだけです。
どのような型番のバイポーラトランジスタも、価格はそんなに変わらずに安価です。
だから、電子工作用途で使うのであれば、コレクタ電流が150mAしか流せない2SC1815 よりも、もっと大電流が流せて、さらに周波数特性の良いNPNの製品(2SC2320、2N2222、など)を使うほうが良さそうですが、このHPも、他の記事との関連性もあるので、PNPは2SC1815,NPNは2SA1015をメインにして説明しています。
この2SC1815と2SA1015は種類が違うのですが、特性が似ているので「コンプリメントペア」として、一緒に使うことが多いためで、この2種類の他に、少し大きな電力を流せる型番を用意しておくと、ほとんどの用途に使えます。
現在販売されているものの多くのトランジスタは、純正品というものはほとんどなくなっていて、中国製のものも多いのですが、それらのサードパーティーで作られた製品でも、全く問題なく作動しますから、安価なものを購入するといいでしょう。
このように、型番が違うものでも、よく似た外観をしています。
この4つは、左から、バイポーラタイプのNPNの2SC1815、PNPの2SA1015、次がNPNの2SC945、一番右は、接合型の電界効果トランジスタ(JFET)の2SK30Aです。
このHPの記事でも、このような、トランジスタと同じ形で、全く用途の違う製品がでてきますので、虫眼鏡を常備しておいて、本体に書かれた表示を見ることと、保存するときに、きっちりと分類しておく癖をつけておきましょう。
PRいろいろな形がありますし形が同じでも用途は違います
本体の書かれた表示は、簡単に消えることはありませんから、ルーペで「型番」を確認して、WEBでデータシートを見て、使い方を知ることができます。
しかし、本体に書かれた表示が消えておれば、何かは分からなくなります。 トランジスタチェッカーを使うと、バイポーラトランジスタであれば、PNPかNPNか、3本の足が何の端子か、増幅率はいくらか・・・などはわかります。
しかし、詳しい型番までは分かりませんから、保管するときは、混ぜてしまわないように、きっちりと分類しておくようにしましょう。
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ディスクリート半導体
半導体を使ったトランジスタやダイオードで、ICの中に組み込んでいないで単体の部品として使うものを「IC(アイシー:集積回路)」と区別して「ディスクリート半導体」と呼びます。
部品の用途、形、大きさは様々ですし、外観だけでは、その製品が何なのかはわかりにくいので、これもやはり、表示を見て、型番を確認して、それをWEBからデータシートを見てそれを特定するようにします。
トランジスタは数種類を購入しておくと便利
電子工作の主流は、ICやマイコンなどを使って遊ぶ記事が多くなって、バーポーラトランジスタを使って電子工作をする記事が少なくなってきていますが、マイコンやワンボードパソコンなどから命令を出力しても、それで扱える電流、電力は小さいので、少し大きな電力で、モーターを動かしたり、リレーを接続したりするには、トランジスタなどのディスクリート部品の基本的な使い方を知っていると、応用範囲が広がります。
そんなに大量に使うことはありませんので、色々と実験をする場合は、NPNの2SC1815とPNPの2SA1015を2-3個程度を準備しておくと、ほとんどそれで回路が組めます。
トランジスタの数種類セットがAmazonなどで販売されていますので、1セット購入しておくと、思いついたときに、いろんな実験ができます。私も下のようなものを購入しました。
PR15種x40個で2000円以下でした
たとえば、トランジスタを使って、ボリュームを回すと、なにかが作動したり変化したり、暗くなったらチャイムが鳴るとか、雨水が一杯になるとアラームが鳴るとか、気温が下がってくると、何かをする・・・・というように、「何々であればどうする・・・」ということを、やってみたくなったときには、各種のセンサー、トランジスタ、抵抗器、コンデンサのセットがあれば、ほとんどのことができます。 私の こちらのページで、このHPで使っている部品類の一覧を書いていますので、それらを参考に、あらかじめ購入しておくのも一案ですね。
2SC1815を基本にして説明します
ここでは、多くの記事で取り上げられることの多い、NPNの2SC1815を使って内容を進めます。
もちろん、同様の型番でなくても使えます。 「低周波電圧増幅用」「低周波電力増幅用」「NPN」の、2SA1832 TTB001 2SD1415 2SB962・・・なども同様に使えますので、互換性などは次のページで紹介します。
2SC1815について
雑誌やWEBで紹介されている回路はを組む場合は、とくに、細かい特性などを知る必要はありませんが、「何Vまで使用できるか」「何Aの電流が流せるのか」「使用温度は?」などを知りたい場合は、まず、データシートをみるのがいいでしょう。
データシートの「絶対最大定格」にある数値を超えて使用すると、トランジスタが破壊しますので、その数値の見方を知っておく必要があります。
たとえば、2SC1815のデータシートでは、150mA程度までの電流が扱えます。
もう少し電流が流したいと思えば、同じ形状で、500mA程度流せる 2N2222 2S5401 2N5551 S9013・・・ などの型番を使えばいいのですが、ここではまず、2SC1815の データシートの簡単な読み方を知って、適当なトランジスタを探すといいでしょう。
下はデータシートの例です。 イメージを示しているだけなので、小さい図ですが、WEBで、ほとんどのトランジスタのカタログやデータシートが入手できます。
現実的には、データシートの数字をくわしく見るのは、かなり特別の場合で、書籍などで紹介されている回路は、普通に動いているので、とくに見る必要もないのですが、私は、データシートにある「用途」「コレクタ電流」「3本の足の配置」は見ています。
もちろん、トランジスタの極限の使い方をしようとすると、データシートに書かれた数字が必要になるので、ダウンロード(または印刷)して、いつでもすぐに見れるようにしておくといいでしょう。
これらの見方や詳しい内容は、詳しくは触れませんが、自分で回路を作ったときに、思ったような数値にならないという場合には、その原因を探るヒントになる場合があります。
例えば、その原因が、「コレクタ損失」が関係している・・・ということなどです。
トランジスタに大きな電流を流すと発熱してエネルギーをとられます。 これは、回路を作って測定した時の、エミッタコレクタ電圧(Vce)xコレクタ電流 が関係する「無駄な電力」で、これがコレクタ損失 と言いますが、上の赤枠のように、コレクタ損失400mWというのは、意外に大きいので、出力に影響します。 このような項目を覚えていくと、意外に役立つ場合も出てきます。
これらの図についても、ここでは説明しませんが、こんなものがある・・・ということをみておいてください。
PRトランジスタによる「増幅」
左図で、小さな「ベース電流」を流すと、コレクタ→エミッタに大きな電流が流れます。 これがトランジスタの増幅作用です。
NPNトランジスタ2SC1815 の3本の足は コレクタ、ベース、エミッタ といい、図では、エミッタが接地されているので、これを「エミッタ接地方式」と呼ばれるのですが、通常は、エミッタを接地するような回路にするのが一般的です。
Vccの電圧がかかった状態で、「ベース電流を変えることで、コレクタ電流をコントロールする」という基本的な回路です。
ここでは、ベース電流は電源(Vcc)から、電圧を下げて供給する回路です。
R1は、LEDを点灯のための抵抗で、200~220オーム程度でいいことを、LEDのところで考えましたから、ここでは、ベースに加わる電流と電圧を決める「R2」の抵抗値を計算で求める方法を説明していきます。
だから、これ以降は、回路設計の考え方の内容ですので、「こんなことをする」ということだけをみていただいて、実際に、必要になったときに読んでいただけばいいでしょう。
計算では「エイヤァ」と決めることが多い
データシートに、直流電流増幅率がありますが、2SC1815では、25~700という数字があります。
付加する電圧や流す電流量によって、増幅度が変わるのですが、データシートには、下のような図があります。
これは、コレクタ-エミッタ間にいくらかの電圧がかかっている状態で、ベースに電流を流すと、大きなコレクタ電流(負荷電流)が流れることが示されていますが、例えば、コレクタエミッタ間の電圧が4Vで、そのときにベースに1mAを流せば、コレクタからエミッタに120数mAの電流が流れることがわかります。
つまり、約120倍もの電流が電源から取り出せるので、電流増幅率は120となります。 このことが「増幅」です。
しかし、今回考えようとしている、上のLEDを点灯させる回路では、ボリュームによってベースの電流を変えるのですが、ベース電流が変われば、それでLEDに流れる電流も変わっていくし、電流が流れると、発熱するために、増幅率も変わっていくので、ベース電流を決めるための R2 の計算をしようとすると、条件を適当に決めて計算する必要があります。
それもあって、計算した結果が正しいかどうかは、測定して確かめるのが安心になります。
このような計算をする機会はほとんどないのですが、やったところで、結構アバウトなもののようですが、それは仕方がありませんし、「そんなもの」です。
ただ、求め方や考え方だけ知っておけば、トランジスタの極限で使いたい場合などには、役に立つでしょう。
PR
トランジスタを動作させる
ここでは、電源の電圧を利用して、トランジスタを動作させるために、ベースに適当な電圧と電流が加わるように、R2 を求めていきます。
これも、「エイヤァ」と決めているところが多いのですが、計算していきましょう。
LEDには、最大で15mA程度の電流(Ic)を流し、2SC1815の増幅度(h)は100として考えます。そこで・・・
【1番目】 コレクタ電流Ic=ベース電流Ibx電流増幅率h という関係があり、 Ic・Ib・h の3つの数字のうちの2つの値がわかれば、残りの数値が求められます。
ここでは、ベース電流(Ib)を求めたいので、h=100、Ic=15mA とすると、ベースに流す電流 Ib=Ic/h=0.015/100=0.00015A と求まります。
【2番目】 次に、コレクタ電流Ic=エミッタ電流Ie と(無理やりに)考えます。
実際は、エミッタからアースに流れる電流は、「コレクタ電流+ベース電流」ですが、ベース電流に対するコレクタ電流の増幅率が 100 もあるので、コレクタ電流に比べて、ベース電流は 1/100、すなわち、1% と小さい値ですので、その程度の違いは「どうでもいい・・・」と考えます。 これは、正確さよりも、計算を簡単にしようという理由です。
【3番目】 更に、エイヤッと、 エミッタベース間電圧Vbe=0.7V とします。
コレクタ電流を流すためには、ベースとエミッタ間に電圧を与えないといけません。 このVbeは、どのトランジスタにも必要なもので、下の特性グラフから読みとってもいいのですが、細かい事は考えないで、どんな場合でも、「エイヤッ」と「0.7V」とします。
下のデータシートと同様に、ほとんどのバイポーラトランジスタでは、Vbeは 0.6~0.8V程度 ですので、ここでは 0.7V としただけです。
以上のこの3点から、(ボリュームの抵抗値は後で決めるとして) 結構適当なやり方ですが、これで必要な数値が(一応)計算できます。 もう一度書くと、
①コレクタ電流Ic=ベース電流Ibx電流増幅率h
②コレクタ電流Ic=エミッタ電流Ie
③エミッタベース間電圧Vbe=0.7V ・・・の3点です。
これから計算しようとする回路では、この3つを全部使わないのですが、もしも、エミッタ側に抵抗が入っていたりして複雑になっていても、常に、この3つで未知の数値を求めることができます。
さて、以上の数値で、R2 を計算しましょう。
①から、ベース電流は(式を変形すると) 0.015A/100=0.00015A となり、150μA 流して、(5-0.7)=4.3V の電圧降下を抵抗を用いて行うのですから、オームの法則 R=E/I から、4.3/0.00015=28667Ω つまり、28.7KΩ の固定抵抗をつければ良いことになります。
市販の抵抗器には、28.7kΩという値のものはないので、22kΩか33kΩなどを使用すればいいことになり、大きい方が安全と考えて、33kΩとします。
次に、使う抵抗のワット数ですが、電力 (電力=電圧x電流です) は 0.7x0.0015≒0.001W(=1mW) と非常に小さいので、入手しやすい、1/8W(=125mW)タイプの小さい抵抗器でいいことになります。
これで R2 が決まりました。 ここで、上にあった、 *最終のかたち* の回路について考えます。
*最終のかたち* の回路
ここでは、ボリューム(可変抵抗)を付けて、LEDの明るさを変えてみようと考えています。
下左図では、ボリュームをいっぱい回しても、増幅率が100倍もあるので、少しでもベース電流が流れると、LEDが消灯しない可能性があります。
真ん中の図の回路を実際に組んでみると、ボリュームを下げても、LEDは簡単に消えてくれません。
そのために、微小な電流でも、ベースに行かないように、アースに落とす方法をとっています。
このボリューム R3 は 100kΩ としていますが、なぜ100kΩなのか・・・は、これも「エイヤァ」で決めました。
流れる電圧電流は小さなものですが、それでも、もし、ボリュームをいっぱい回しても、LEDが消えなければ、もっと大きい1MΩなどの可変抵抗に変えることになるのですが、ともかく、エイヤァと決めたのですが、あとで、あえて計算をしていますので参考に。
電子工作は「手を動かして楽しむ」ものですし、このような、LEDを点灯する小電力の回路では、燃えだすことはありませんから、しばしば、適当な思い切りで値を決めるのも「アリ」と考えておいてください。 計算よりも実践のほうが楽しいですから・・・。
【寄り道しますが100kΩの是非を計算してみます】
100kΩで、結果はうまくいいきましたが、アースなしの場合を計算して確かめてみましょう。
ボリュームの抵抗が最小の「0Ω」の場合には、ベース電流は計算したように150μAです。そして、最大抵抗の133kΩのときには、(5-0.7)/(100000+33000)≒33μAと計算されます。
もしも、1MΩの可変抵抗を使うとすれば、最小電流は、(5-0.7)/(1000000+33000)から、4μAとなり、ボリュームを最大抵抗値にしたとしても、いずれにしても可変抵抗器を通して、ベースには「常に」若干の電流が流れています。
だから、このように、少しでもベース側に電流が流れると、トランジスタが増幅して、完全にLEDが消えてくれない可能性があります。(こちらのLEDの記事では、LEDに流れる電流が30μAでも、LEDが点灯していましたから・・・)
ボリュームで抵抗値を最小にした時にベース電流が最大になって、コレクタ電流も最高になるのですが、この場合に、100kΩの抵抗に流れる電流は、いくらになるのでしょうか?
測定してみたところ・・・ 8μAでした。
おさらいになりますが、これを計算しようとすると、どうすればいいのでしょうか?
何か難しそうですが、ベースからエミッタに流れる時に トランジスタ内で 0.7V 電圧低下するというのが「3つ目」の考え方でしたので、つまり、100kΩで0.7Vが電流が流れて0Vになるのですから、R=E/I から 0.7/100000=0.000007A、すなわち、計算では7μAが流れます。
測定値は 8μA でしたが、計算値とほぼ合っています。 これを次の図でイメージしてください。
ボリュームが最小のときは、100kΩの抵抗がないとして計算すると、電流値は150μAになり、100kΩの最大にすると、計算値で7μAが流れるので、ベース電流Ibは 150-7=143μA がベースからエミッタ側に流れる電流値ということになります。
このように、アースを取ることで、トランジスタのベースに流れる電流が減るのですが、このように考えたことが正しいかどうかは、回路を作ってテストすれば確認できます。
このような計算は、数字の遊びのような計算ですし、計算をして回路を組む機会はほとんどないのですが、考え方を知っていると、その他のトランジスタや、もっと大きな電流で使おうとする場合に役立ちます。
・・・ということで、実際に回路を組んで確かめてみました。
ブレッドボードで回路を作って確認します
このように回路を組んで、電流を測ります。
回路の間にテスターをつなぐので少し面倒ですが、ブレッドボードであれば簡単でしょう。
ここでは、下の回路図での、測定した値を示しています。 赤字が実測値で、それ以外は、見かけの数字または仮の数字です。
測定も正確でないでしょうから、誤差があっても、計算値とそんなに違いがないことも確認できました。
図に記入したように、ボリュームを回すとベース電流が0から0.12mAになり、それに伴ってコレクタ電流が0から11.5mA流れるようになっており、ほぼ、計画通りです。
写真のように、ボリュームを回すと明るさが変化します。 これで目的達成で、成功です。
余談ですが・・・ 最初に、電流増幅率を100 として計算しました。 測定すると、ベース電流の最大値0.12mAとエミッタ電流の最大値11.6mA なので、約97 と、100に近い増幅率になっているのがわかります。
つまり、「エイヤッ」と決めた値も、結果的に合っていたことになりますが、もしならなかっても、目的はLEDの明るさが調節できればいいのです。
つまり、「計算は一つの道具」ということですし、「論より証拠」で、測定した結果がよければすべてよし・・・・ということです。
【コレクタ損失の確認や上で決めた33kΩでない場合は・・・】
これも寄り道になりますが、最後に、データシートのところで出てきた、コレクタ損失やベース電流を決める抵抗が33kΩより小さい場合を確認しておきます。
(特に重要なことではありませんし、計算するよりも、測定したほうが手っ取り早いので、測定して確認します)
まず、LED輝度を最大にして、コレクタエミッタ電圧を測ると、0.75Vでした。コレクタ電流が約0.02Aなので、コレクタ損失計算値は、0.75Vx0.02A=15mW と、絶対最大定格の400mWにくらべて十分小さいので、全く問題ではありませんね。
次に、ベース電流を決めるための33kΩを20kΩにして、ベース電流、コレクタ電流を測定しても、同じ値でした。
つまり、かなり適当に「エイヤァ」と決めた条件値であっても、結構うまくいく・・・という感じです。
そして、さらに、少し危険な実験ですが、コレクタ電流を上げたときのコレクタ損失の状態をみてみました。
もちろん、これについても、電流が流れると、回路のどこかの温度が上がって、データシートの数字とは異なってくることは考えられますが、5Vの電源電圧で、50mAの電流を流すには、LEDではなくて、5V/0.05A=100Ω から、100Ωの抵抗に変えます。
コレクタエミッタ電圧を計算用の「0.7V」として、ベースの制限抵抗値を計算すると、8.6kΩになります。
そこで、10kΩの抵抗が手元にあったので、それでコレクタ電流を実測すると、44mA流れています。
その時のコレクタエミッタ電圧は実測すると 0.81V でしたので、コレクタ損失は0.81Vx0.044A=36mW です。
つまり、コレクタ損失を気にする必要はあるのですが、このHPでやっている内容程度の小さな電流量では、それが問題になることなさそうなようです。
以上のようなことは、計算や確認は、無駄なことかもしれませんが、計算と実測をうまく使って、一度、自分で確かめておくと、何か、電気を手なづけた感じで安心する感じがしませんか?
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書籍などに載っている回路は、問題なく動作しているものなので、あえて、このような計算や測定をする必要はないのですが、回路を少しアレンジしたり、自分で考えた回路を組むと、予期しないことやわからないことが起こることがあるかもしれません。
しかし、それは、部品の誤差や使用温度などで変わるものなので、ある程度は仕方がないことですから、その原因を考えるためにも、このような計算できれば安心です。
変な言い方ですが、電気を流す瞬間のワクワク感も、結構楽しいものですし、自分が楽しむものなので「危険がなければいい」という程度に考えておいて、色々なアレンジをするのも、結構楽しめるでしょう。
次の記事は、2SC1815以外の、いろいろなトランジスタも同じように使うことができる・・・ということを紹介しています。
PR
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