電子工作に使うスイッチ類について
押しボタンスイッチやリレーなどは電子工作に欠かせません。 ここではメカニカル(機械式)のもので、電子工作に使う小さなスイッチやリレーをとりあげます。(半導体などを使った、無接点のものは除きます)
これらは、私がこのHPの記事で使っているスイッチですが、このように、いろいろな種類のものがあります。 呼び方もまちまちで、ここに書いた以外の呼び方もあるでしょう。
スイッチの種類では、(ここにないものも含めると) タクトスイッチ、トグルスイッチ、DIPスイッチ、スライドスイッチ、押しボタンスイッチ、波動スイッチ、ロータリースイッチ、マイクロスイッチ、セレクトスイッチ ・・・などと、いろいろあり、同じ使用目的のものでも、メーカーの呼び方が違うものもあります。
スイッチを選ぶ場合には、電子部品を扱うテンポやWEBサイトで紹介されている商品から選べば、ほとんど問題はないでしょうし、用途、接点、動作について分類されることを知って、それで選ぶと便利です。
このHPで取り上げる電子工作の範囲では、大電流・高電圧を扱わないので、「定格=スイッチの保証基準」や「耐久性」はそんなに気にしなくていいのですが、逆に「微小負荷による接点の不良」や、ブレッドボードでの使いやすさ、ストロークなどの動作と操作性 ・・・ などを考えて購入することも大切になってきます。 特に、スイッチ類は、機械的に接点が接触するので、接触不良などで、目に見えない困った現象やノイズが発生します。
ここでは、突入電流、サージ電流、チャタリングなどについても簡単に紹介しています。回路を組む場合の参考になれば、利用していただきたいと思います。
スイッチの用途と種類
電子工作に使われる小さなスイッチも、サイズの大きな電力用のスイッチも、分類や呼び方、区分は同じですので、スイッチの基本をひと通りを知っておくといいでしょう。
スイッチの用途は、大きく分けて、①回路のON-OFF と、②回路の切り替え で使われます。
電子工作で使われるスイッチは、人が操作する、押しボタン式の「操作用」の他に、マイクロスイッチやリミットスイッチのような「検出用」や、ディップスイッチのような「設定用」に分けて説明されることもあります。
その区分には、「極と投」「接点の接触形式」「動作による分類」などでも種類分けがされるので、それらの用語について知っていると、さらに目的のものを探しやすいでしょう。
PR「極」は回路数、「投」は接点数
「極」とは1度の操作でON-OFできる「回路数」のことで、「投」は「接点数」のことです。
1操作(例えばボタンを押し込む操作など)で1回路のON-OFFができるものを1極、3回路を同時にON-OFFができるものを3極といいます。
上の図では「1回路スイッチ」「2回路スイッチ」と書いてある「回路」が「極」のことです。 また、1回路1接点スイッチは、「1極単投」、2回路2接点スイッチは「2極双投」という言い方もあります。
私は、この図のように、「回路数と接点数」で覚えていますが、言い方が違っても、どのようなものなのかがわかるようにしておくといいでしょう。
接点の接触形式(A接点、B接点、C接点)
接点の構成で、A接点、B接点、C接点の3種類の形式があります。 押しボタンスイッチで言えば、「A:押すとON」「B:押すとOFF」「C:押すとONのものがOFF、OFFのものがON」になるものの分類です。
ここでは大文字のABCを使っていますが、小文字でa接点、b接点、c接点と表示されることも多いです。
また、A接点は「メーク[Make]接点」、B接点は「ブレーク[Break]接点」と呼ばれることもあります。
この図のように、a接点は、押すとONになるもの、b接点は、押すとOFFになるもの、c接点は、どちらかがONですが、その反対側はOFFになっています。
PR動作(オルタネートとモーメンタリー)
押している間がONで、手を離すとOFFになる「モーメンタリー(一瞬という意味)」動作と、押した後に手を離してもONのままの保持動作がある「オルタネート(交替バンコの意味)」動作のものがあります。
商用電源用のスイッチには、それらに加えて、プッシュプル、プッシュロック、ターンリセットと呼ぶものがあります。
よく使われるのは、下の図のような動作のものです。
スイッチに関するいくつかの注意点・問題点
【使ってみないとわからない使用感】 スイッチ類は非常に多くの種類があって、何を買っていいのか戸惑うのですが、種類(回路数と接触形式)を間違えなければ、ほとんどハズレはありません。
しかし、使用感や使い心地などは、データシートを見るだけではわからないので、できれば、自分で触って購入するのが無難でしょう。
【ノイズの発生があります】 スイッチや接点があるリレーなどでは、ON-OFFの際にノイズが発生します。 機構上、接点の影響を皆無にするのは無理です。
有接点スイッチであれば、これらのノイズ発生を完全になくすることは難しいのですが、一般的な最低限の対策を知っておいて、できるだけ、外部に影響を与えない対策をとるようにします。
突入電流・サージ電流・チャタリング
これらは、予期しない、下図に示すような、瞬間的な電流変動で、これが発生すると、回路や外部に影響を与えます。
スイッチ以外でもコイルやトランス、接点のある回路などで発生するのですが、完全に防止することは難しいものです。
PR下図は、直流の場合のイメージ図です。
突入電流は、電源を入れるときに、コイルなどの回路の影響で、瞬間的に、高電圧、高電流が生じるものです。 チャタリングは、スイッチの接点などで瞬間的に生じる接触不良状態です。 そして、サージは、外部からの影響で、電流や電圧の変動を言います。
イメージでは、以下のような変化です。
(イメージ図です)
これらの完全な除去は難しいのですが、実際の回路に用いられる一般的な対策方法は、下に示す例のように、「コンデンサと抵抗器をつかう」「ダイオードを利用する」方法がほとんどです。
【突入電流】
回路中にコイル(巻線)があれば、自己誘導が起きて、電流のON-OFFの瞬間に大きな電流が発生します。 回路中にあるコンデンサも、その性質上、電源を入れた瞬間に大きな電流が流れます。
白熱電灯などでも、抵抗と電流による温度変化や通電状態の変化から、スイッチを入れた瞬間に大きな電流が生じます。
特にこの、電源を入れたときの発生する大きな電流を「突入電流」といいます。そして同様に、スイッチを切った瞬間には、逆向きの過大電流が流れる場合があります。
この過大電流は「電流の熱作用」による異常発熱が起きたり、急激な電流電圧変化で、機器の誤作動や故障の原因になリます。
【サージ】
突入電流は、回路で生じるものですが、サージは雷などの放電、電流や磁界電界の急変などによって、過渡的な電圧変化(サージ電圧)に伴う電流変化(サージ電流)が生じるものを含んだもので、これは、回路内外に起因するものです。
例えば、近くにあるスイッチのON-OFF時に、目に見えないような電流の急変やスパークの発生で、サージ電流が発生して影響を受けることがあります。
また、交流回路では、外部か侵入するノイズは、電流だけでなく波形の乱れで、音質の劣化を引き起こします。
シールドや回路設計で対策するのですが、完全な対策は簡単ではありません。
【チャタリング】
接点の接触の瞬間に、接点の振動等によって瞬間的なON-OFFが繰り返されるもので、電流が急変(振動)する現象をいいます。
接点が作用する、スイッチのON時とOFF時にこれが発生します。 また、接点がつながっている通常の状態でも、このような瞬間的なON-OFFが起こっている・・・ともいわれています。
つまり、接点があれば生じるものなのですが、コンデンサなどを用いて軽減対策をするのですが、根絶は簡単ではありません。
PRスイッチやリレーのノイズ対策例
有接点のスイッチやリレーがON-OFFする時に発生するノイズは、他の機器に影響を及ぼしますが、ノイズを無くすることができないので、最低限の対策方法は知っておいたほうがいいでしょう。
ただ、専門家でもその対応は難しいもののようで、ここでは、一般的で、私もやっている方法や内容を紹介します。
スイッチやリレーには、ノイズに対する対策がされているものもありますが、通常のものは対策されていませんので、対策用のコンデンサなどの部品を外付けしたり、部品の配置やシールドなどで対策しないといけません。
この対策は、決まった方法や確実なものは無いようです。 一般的には、C+R(コンデンサと抵抗)による方法や、ダイオードを利用する方法でそれを軽減しています。
趣味の電子工作では、
①スイッチ周りには→回路と並列にC+R
②コイルには→並列に電流に逆向きにダイオード
③IC回路には→ パスコン(バイパスコンデンサ)
という3つの対策方法を頭に入れておくといいでしょう。
ここに示す例は、確実で専門的な方法ではないかもしれませんが、一般的に行われている方法ですので、ともかく最低限のやり方・・・と考えておけばいいでしょう。
1.スイッチ周りの対策
スイッチのON-OFF時には、目に見える状態ではなくても、いつも「チャタリング」が発生しており、それによって、電源電圧よりも高い電圧や火花が発生していますので、その影響を緩和するために、C+Rを用いてそれらを低減する方法が一般的にとられています。
下図が1つの例です。 C+Rをスイッチに並列にしたり、回路内にコイルがあれば、コイルに並列にする方法です。
並列にC+Rを追加
スイッチ周りの対策の場合はC1のみの場合も多く、 その場合は、0.01~0.1μFのコンデンサ(耐圧200-300V程度以上)を用いることが多いようです。
オムロンさんのHPによると、後段にリレーコイルがある場合は、リレーのコイル部に、C2に、定格電流(A)x0.5~1μFのコンデンサ、R2には、リレーのコイル電圧(V)x0.5~1Ωという目安でC+Rを配置することが示されています。
例えば、5V2Aのマイクロリレーでは、C2=2x(0.5~1)で1~2μFのコンデンサ、R2=5x(0.5~1)で、2.5~5Ωの抵抗を直列にして、スイッチに対し並列となるように設置すれば良いことになります。
AC回路の場合は、無極性のコンデンサを使います。
2.ダイオードを用いる場合
ダイオードD1の極性は流れる電流の向きと反対にします。 D1の耐圧は回路電圧の10倍以上を目安にします。
私は、通常、5Vの直流電源が多いのですが、まとめて安価で購入した、1A200Vのファストリカバリーダイオードを多用しています。交流ではこの方法は取れませんね。
3.電源ラインに生じるノイズの除去
通常は、このように低容量と高容量のコンデンサを並列にしてアースします。 低容量のC3は高周波成分を、高容量のC4は低周波成分の影響を低減するためのものです。
厳密に言えば、コンデンサの種類や容量は回路や除去したい周波数による・・・ということもあって、専門的でわかりにくいのですが、とくに、容量の小さい方の高周波除去が効果的なようですので、私は、C3は0.01~0.1μF程度だけをつける場合が多いですし、また、C4を付ける場合は、10μ~100μF程度のものを用いています。
私自身も専門的なことはよくわかりませんので、おまじないのように、ともかく 0.1μと10μを使っていますが、対策できているのかいないのかも、よくわかりません。
対策方法は以上ですが、これらが確実な方法かどうかわかないものの、一般的にも、このような対策が行われていますので、適宜に利用いただくといいでしょう。
PRスイッチを購入する時の注意点
つぎに、電子工作のように、小さな電力で作動させるスイッチで、スイッチを購入する場合の注意点もあわせて紹介します。
「最小負荷電流」に注意
スイッチやこのあと説明するメカニカルリレーなどの、接点がある電子部品については、耐電圧などの定格には気をつけるのは当然なのですが、特に低電力の電子工作では、その反対に、定格内であっても、小さな電流電圧で作動させるときの問題があります。
それは「最小負荷電流」というものです。
ON-OFFで電流を流したり切ったりする場合に、接点部分では、微小部分の圧着による変形や摩耗と、微小スパーク等による「セルフクリーニング」が同時に起こって、それによって、常に、接点がリフレッシュされて、接続状態を保っています。
しかし、小電力(用の製品)になると、接点の接触圧力が小さく、流れる電流も小さいので、微小スパークによる自浄作用が小さくなって、セルフクリーニングが充分に行われにくくなって、大電流では生じなかった接触不良ですが、小電力であるために、接触不良等が生じやすくなります。
いわゆる、省電力の使用状態は、劣化している接点と同じ状態になります。
これを防ぐためには、①小電力(微小電流、微小電圧)でスイッチやリレーを常用するところには「微小負荷用」のものを使う ②データーシートなどに示されている仕様に「最小負荷電流」が示されているものを購入して、「最小電流以上で使用する」 というようにするようにします。
これは意外なことのようですが、微小電流で使う場合の問題があることを覚えておくといいでしょう。
寿命
スイッチやメカニカルリレーなどの有接点部品は、「機械的耐久性」「電気的耐久性」に限度があって、いつまでも使用できるものではありません。
最近の部品類は、何十万、何百万回の開閉に耐えるように作られており、非常に長寿命になっているのですが、環境や条件によっては、その何分の一以下になるのは通例だと考えておく必要があります。
開閉頻度の高いものは、余裕を持って定期的に取り替える必要のあるもの・・・だと考えておきましょう。
例えば、100万回保証の製品を使うとすると、毎秒1回、四六時中開閉する用途なら、1日で 60秒x60分x24時間=86400 の開閉をするので、数字的には、10数日程度の使用しか保証されていないことですので、電流が小さいと思っていても、過信は禁物です。
実際的には、このような激しい使い方はしませんし、それで壊れてしまうことも滅多にないのですが、ともかく、有接点の部品は、「劣化するもの」ということを認識して、重要な部分は更新(定期的に取り替える)する計画をしておく必要があります。
PR
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