DCモーターの回転数を変えてみる
前のページでブラシ付きDCモーターは、加える電圧で回転数が変わるということがわかりました。
そしてさらに、回転数と電流値はあまり関係なく、電流値を変えても回転数を変えることは難しそうなこともわかりました。
また、トランジスタのページで試したように、電流増幅用のモノポーラトランジスタを使って、エミッタ接地回路でベースに加える電流値をボリュームを使って変えることで、100mA程度の電流を制御できそうだということがわかりました。
このことから、100mA以下で回転するDCモータ(FA130)を使って、実際に簡単に速度制御ができるのかどうかを試してみたいと思います。
ただ、ここで残念な「ネタバラシ」をしておきますが、ボリュームを使って、徐々に電圧を加えるという方法では、最初の回転を起こすところで問題が出ましたので、ここでやっているやり方はおすすめできません。
問題は、低速から徐々に回転数を上げていきたかったのですが、回りだしてくれません。 この記事は失敗談でもっと検討しないといけませんが、ここでは、考え方ややった内容を紹介します。
失敗した内容を書いていますが、収穫は、ボリュームでトランジスタのベース電流を変化させると、モーターの回転数が変化することがわかりました。 これは、何かのヒントになるでしょう。
当初は、ボリュームを使って、モーターの正転と逆転に加えて、速度コントロールを行おう・・・ということを目論んでいたのですが、低速からの起動時に、電圧が足らないで十分なトルクがないために回転を始めてくれません。 そうなると、ボリュームでスムーズな動作はできませんので、この考え方はダメだということです。
ここでは、やってみたことを紹介します。
トランジスタを使った基本回路
手持ちのDCモーター(FA130)は、どうも純正ではなさそうですが、100mA以下の消費電流で、1.5~3Vでうまく回ってくれることから、トランジスタを使った基本回路で速度変化をさせることができそうです。 これが基本回路です。
この回路は、LEDを使って明るさを変えたときと同じものです。
2SC1815は、150mA程度までのコレクタ電流が流せますので、LEDをDCモーターに変えて、トランジスタのベースに加えるための抵抗(LEDのときには33kΩを使用)を考え直せばボリュームで回転を変えられると考えました。
LEDではコレクタ電流が20mA程度でしたが、モーターではコレクタ電流を100mA以上を流したいので、抵抗値を変更して対応します。
この抵抗値を計算しますが、何回か出てきているのですが、忘れた方は、こちらのページを見て確認ください。
電流増幅率を100とすると、コレクタに流したい電流が100mAとするとベース電流を10mA程度流してやる必要があります。 そこで、可変抵抗の100kΩからアースに流れる電流は微小なので無視するとして、必要な抵抗値を求めると ・・・
R=E/I=(5-0.7)/0.001=4300Ω になります。 しかし、ここで使用しているモーターは、電流が50mA程度もあれば充分回ってくれたので、ここでは、10kΩの抵抗器を使うことにしました。
これでいいのかどうかを検算(逆算)をすると、I=E/R=(5-0.7)/10000=0.43mAですので、増幅率が100であれば、0~43mAの電流が制御できることになります。(ちょっと不安そうなので、余裕を見て5kΩ程度にしたほうがよかったと思いましたが・・・)
【参考】
最初は、いろいろな不安がありますので、テスターなどで電流を測定していますが、もしも、異常な過大コレクター電流が流れそうなら、モーターに直列に、電流制限抵抗を入れてやればいいでしょう。 ここでは計算だけをしておきます。
この場合は、電源は5Vで、モーターの適正電圧は1.5~3Vですので、抵抗器によって2Vを低下させて100mAを流してやればいいので、 R=E/I =2/0.1=20Ω の抵抗を使えばいいことになります。
このときの消費電力はP=IE から、0.02Wなので、1/8W型の小さい抵抗器で問題ありません。
以上、今までのおさらいを兼ねての計算ですが、OKでしょうか?
ブレッドボードで回路を組んでみます
ベース電流とモーターにかかる電圧、モーターに流れる電流をテスターを利用して測ります。 テスターが2つしか無いので、別々に測りました。
テスターのマイナス表示は気にしないでください。デジタルメーターは便利なので、こんなズボラなことをよくやってしまうのですが、・・・。
この結果から、(単純計算ですが) 電流増幅率は1.5Vで254、3.5Vで195 となっています。
もちろん、安価なテスターの値ですので、正確ではありませんが、最初は100と仮定したのですが、その値以上になっているので、結果的にはこの回路でうまく行ったようです。
ただ、モーターが回転していると、このようなグラフが得られるのですが、モーターが止まっている状態でボリュームを徐々に回して回転させようとすると、ベース電流はどんどん上がるのですが、モーターが回ってくれません。
この時、モーターは止まったままなので、モーターにかかる電圧が「0」のままです。
電圧がかからなければ、電流が流れないということですので、モーターが回らないことになります。 しかし、これはちょっと問題です。
そこで、手で少しモーターを回してやると、ベース電流に見合った電圧が加わって、通常のようにモーターは継続して回ります。
このようにボリュームによって徐々にコレクタ電流を高めるのではなく、いっきにモーターに1.5V加えれば確実に回ってくれるのですが、徐々に加える方法では、電圧が低いとトルクが不足して回り始めてくれません。これは困ります。
ここでの電気の流れは「水流」に例えられるのですが、電圧がかかっていなければ電流が流れない・・・という、まさにこの状態がこれです。ある電流を流そうとすると、電圧が必要・・・ということです。
余談ですが、低速から回す方法は?
アナログ的に、定速からモーターを回す方法の一つに、電流パルスを加えて制御する方法があります。
秋月電気さんから、「PWMスイッチングDCモーター速度可変セット」が販売されています。
これは、タイマーIC「555」を使って、発振波形のデューティ比を変えることで速度を変える仕組みですが、出力された波形の電圧をオシロスコープで測ると、最大値が10V以上あるのですが、周波数が10kHz以上なので、モーターがそれに追従しないで、見かけの電圧が3V程度以下になることで100RPM程度でもモーターが回るようです。
また、マイコンを利用して、パルスの状態を変えて、同様に速度調節することが一般的に行われています。
これはデジタルの領域ですので、ここでは取り上げませんが、これも上の555の場合と同様で、モーターに充分な電圧がかけられるので、電流だけで速度が変えられるということなのでしょう。
以上の結果、トランジスタだけで電流を変えても、電流が少ないと、それにつれて電圧が低下するので、この方法は失敗です。
当初は、ボリュームを回すと正転と逆転に加えて速度コントロールができる・・・という目論見があったのですが、結局うまくいきませんでした。
以下に、最初に考えていたイメージだけを示しておくことにして、このあとの回路の組み立てや実験は断念します。
考えていた回路 (ここでは、製作や動作確認はしていません)
この目論見は、電源を2つ用意して、さらに、コンプリメンタリ・ペアのトランジスタを用いることで電流の方向をボリュームによって変えようとして考えていた方法やNPNとPNPを2個づつ(計4個)を使ってHブリッジ回路を考えるというやり方が考えられます。
コンプリメンタリ・ペアとは、特性のよく似たNPNとPNPトランジスタの組み合わせのことですが、今まで使っている2SC1815に対しては、(カタログにも書いていますが) 2SA1015が対応しています。
これを使って、ボリュームを回す位置で電流の流れ方と大きさを変えてやろう・・・という考え方ですが、この図は書きやすいように、コレクタ接地になってしまいましたが、エミッタ接地にしてもいいでしょう。
しかしともかく、回りはじめの不安やトランジスタ間のばらつき調整が面倒なことなども考えられるので、これを実際に組んでテストをしても、多分、いろいろな不安要素がありそうなので、ここでは、実際に組まないで、イメージだけを示しています。
その対策は、別の機会に考えようと思っていますが、例えば、極性のない容量の大きめのコンデンサを入れて電気をためてやったり、定電圧でもある程度の電流を流しておいて起動を助けるとか、手動のスイッチと速度調整を分けて行い、スイッチで回転方向を切り替えるようにしておいて、起動時はモーターが回転する最低電圧が加わってすぐに回転をさげるようにするとか、・・・・などを考えながら試してみたいと思ってはいますが、これらはゆっくりと考えるとして、ともかくここで、いったん中断します。
以上、ここでは、小型でたまたま消費電流が少ないDCモーターが手元にあったので、安価なバイポーラトランジスタを使って何かできないかを考えて記事を書いてきましたが、中途半端で終わり申し訳ありませんでした。
このように、電子工作では、自分で考えたことがうまく行かない・・・というような問題は通常的に起こります。それが楽しみと考えて、いろいろな方法を試すことも面白いことです。
今回使ったFA130が小電力で回ることから、このように常用のバイポーラトランジスタを思い浮かべたのですが、正規のモーターであれば、150mA以上の電流値が必要なので、使うトランジスタも2SC1815は使えませんし、ここで示した数字も、大幅に変わリます。 だから、この記事は、考え方の一つと受け取ってください。
このように、このHPでは、誰かが考えた設計図ややり方をそのまま真似るのではなく、いろいろやってみてヒントややり方を探ったり考えたりするのが目的ですので、その趣旨を理解して、オリジナルな電子工作を楽しめるようになっていただけたら・・・と考えています。
モータードライバー
ロボットなどをマイコンで動かす場合はモータードライバーが用いられます。 モータードライバーの中には、安くて簡単にON-OFFや速度調整ができる仕組みのあるものがあります。 この記事はアナログ中心ですので、使用するには自由度も低いのですが、初歩的なところを次のページで取り上げましょう。
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