部品数が少なくて確実に発振してくれる回路
ここでは、電子工作で使えそうな発振回路を対象にしていますので、「音がでる」「LEDが点滅する」・・・という程度の動作ができればいいので、波形や精度というのはあまり重視ししないで、ともかく、部品数が少なくて、ブレッドボード上にラフに回路を作っても、うまく発振してくれたものを紹介します。
発振回路について書籍を見ると、様々な発振回路が紹介されていますが、多くは、抵抗やコンデンサの値などの細かい仕様が書いていなかったり、そして、それが書いてあっても、回路図通りにブレッドボードに組み上げても、うまくいかない・・・という経験をした方も多いと思います。
この原因を探って対策できればいいのですが、私を含めた初心者の方にはそれを理解するのもハードルが高い内容も多いので、ここでは、「回路を組んでみると発振した」というものを示しますので、これを参考にアレンジしていただくと使えそうな回路が見えてくるかもしれません。
私がやりたいと考えている「発振」
発振回路を分類すると、 ①コイルを使わない「CR発振」 ②コイルを使う「LC発振」 ③その他 例えば、発振子を使うもの ・・・と分けるとイメージしやすいでしょう。
そしてこのHPでは、「音の発生・点滅のスイッチ動作」などが当面の目的ですので、①「秒」が単位の「タイマーのような発振」と ②スピーカなどで音で確認できる周波数範囲の発振・・・が対象にしているものということになります。(お断り:ここでは、一般的な発振について紹介しているのではないので注意ください)
このHPの別のページでも、すでに、「ブロック発振(こちら)」や「タイマーICを使った発振(こちら)」などを紹介しましたが、私の経験で言えば、コイルを用いる発振はうまく作動しないことが多いようなので、ここでは、コイルを用いないで、部品が少なく、そして、実際に作動したいくつかの回路例を紹介します。
ここでは、用いる部品数が少なくて、そして、簡単な部品交換や可変抵抗器(半固定抵抗器)などをもちいて簡単に調節(変化)できればBESTと考えて、 (1)PUT(少し変わり種のトランジスタ)を用いたもの (2)弛張発振回路の一つ (3)水晶発振子のさわりを少しだけ・・・ ということを紹介します。
これらの回路自体は、先人が苦労して作った、すでに「基本形」が出来上がっていて、広く書籍やWEBで紹介されているものを一部アレンジするなどのものですので、当然、電圧や部品の状態、温度の状態で差異が出るのは普通に起こります。この記事は、電子工作に応用するためのヒントをしめしているものだと考えておいてください。
ブレッドボードでの空中配線なので、ここにある回路を組んでも、コイルのインダクタンスやコンデンサ容量が「わるさ」をして、発振状態がかなり不安定になったり、発振しない場合もあるかもしれません。しかし、ここで紹介しているものは、発振を確認したものですし、かなりラフで鈍感な回路ですが、安定しているとは言えない点は理解ください。
PUTを利用した簡易な発振回路
「PUT」はプログラマブル・ユニジャンクション・トランジスタのことで、写真のように、バイポーラトランジスタ(このHPでも多用している2SC1815など)と同じ形をしており、ここでは、2N6027Gという型番を使用しました。
価格も20円程度の安価なもので、5個ぐらい購入しておくと、気軽に使えるでしょう。
データシートによれば、一般的な用途として、発振回路やタイマー回路に使えるようで、WEBでもいくつかの記事が見られますので、それらも参考にされるといいでしょう。
図示記号は上のように、ダイオードにゲートの足が出ているもので、3本の足は、A:アノード K:カソード G:ゲート と呼び、サイリスタとよく似た図示記号です。
内部構造はバイポーラトランジスタのコンプリメンタリペアをつないだような働きをする・・・と説明されています。 (これについては、実際に回路を組んで確認した内容を後で簡単に紹介しますが、このまま置き換えたのでは、やはり「難あり」でした)
今回確かめてみた回路
このように、電源電圧と抵抗値を変えてLEDの点滅の様子を見ています。
電源電圧は、3.5~5Vと書いていますが、10kΩでは3.5V~10V、3.3kΩの時は3~9Vの範囲を大きく外れると、うまく点滅(発振)しませんでした。
電源電圧によって、若干ですが点滅周期は変わります。また、電源電圧によって、波形の形が変わっているようです。(白矢印部分) ただし、目で見た感じでは、LEDの明るさの違い以外はわかりません。
図中の( )に示したように、10kΩの抵抗値を3.3kΩと33kΩなどに変えると、簡単に点滅周期を変えることができます。(点滅時間周期は、オシロスコープの波形を実測しています)
もちろん、コンデンサ容量を変えても周期が変わりそうですが、10kΩに対する抵抗比によって、点滅時間がキリがよい時間になっているようなので、簡易な発振回路として使えそうな感じです。
例えば、5秒にしたければ、50kΩ、0.1秒にしたければ、1kΩにすればうまくいきそうな感じの数字になっているようですから・・・。
また、LEDを3.3kΩの固定抵抗に変えると、下図のようなオシロ波形になりました。
もちろん周期tも変わりますが、LEDの点滅時の影響がなくなって、かなりシンプルな波形になっています。このときのトータル電流値は1.4mAで、電圧の最大最小値(Vpp)が3.3V程度ですから、特に、消費時の電力による発熱なども問題はなさそうです。
この、LED(や抵抗)の負荷を外すと、発振しなくなります。
これ以外にも変更するといろいろな状態を見ることができそうですが、これらは、実際に応用回路を作った時に考えることにして、ここでは、「このPUTは使えそうだ」・・・という結論にしておきましょう。
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次に蛇足の内容になりますが、PUTの内部構造が紹介されていたので、PUTを2SC1815(NPN)と2SA1015(PNP)のコンプリメンタリペアを利用して置き換えてみるとどのようになるかを確認しました。(下の回路図)
WEBの記事で、可変抵抗は1kΩが良い・・・とあったので、多回転の半固定抵抗を使って見たのですが、発振状態が不安定で、LEDの点灯もあまり良くありません。 もちろん、ここでいろいろ試しても良かったのですが、PUTを使って目的が達成していますので、これ以上深入りしなかったのですが、これは不採用という判定をしました。 (5kΩの可変抵抗と、10kΩを33kΩに変えて見る程度は、別の機会にやってみようと思います)
「弛張発振」について
次に、発振の書籍でしばしば出てくる弛張発振の例を取り上げます。 これは、「しちょうはっしん」と読みます。緩めたり引っ張ったりして発振する・・・というイメージでしょうか。
発振回路の分類方法には、上にあげた分類(CR・LC・発振子などの分け方)以外に、「弛張型」と「帰還型」という分類方法があるようで、書籍などに載っている発振回路の多くは「帰還型」に分類されているようです。
この帰還型は、正帰還(ポジティブフィードバック)とCRL(キャパシタンス、抵抗、インダクタンス)を用いた『共振』を利用するのものですが、たくさんの回路が紹介されているのはご存知でしょう。
水晶発振子など用いたものや、CR発振、LC発振、マルチバイブレータなども帰還形にして発振させることが多く、波形や電圧分布などがきれいな形になるものが多いので、方形波、正弦波などの基本波形はこのような帰還型で作られることが多いようです。
もう一方の弛張型は、断続するON-OFF信号が発振信号となるもので、回路が単純なものが多い感じです。
このHPで紹介したN555タイマーICを用いた発振などは、この弛張型に分類されて、こちらで紹介したように、きれいな方形波で発振するものもありますが、どちらかというと、波形よりも簡単さが優先される感じです。
弛張発振に分類されるものには、ネオン管を用いた発振、アーク発生時の放電を利用した発振、リレーのON-OFFを用いたものなどがあるようですが、ここでは、弛張発振の例として、上のPUTで紹介したバイポーラトランジスタ回路を少し変えてみると、うまく発振しましたので、それを紹介します。
弛張発振回路の例
これ以外に、1015と1815を入れ替えた回路なども同様で、RとCでON-OFF(発振)し、LEDを点灯させるために電力増幅を加えている・・・というような回路です。
蛇足ですが、私は未だにNPNとPNPの足に迷います。 足のECBの配置は2SC1815と2SA1015は同じで、矢印のあるのがエミッタで、電流は矢印の方向に流れる・・・というのをわかっていても、CとEをどうつなぐのかを迷ってしまい、毎回確認しなければならないのですが、これは、慣れるまで覚えてしまうか、毎回データシートを見るか・・・ですが、私は毎回確認してから作業している状態です。
ブレッドボードに配線して、電源電圧を変えるとともに、( )のように抵抗とコンデンサを変えてみて、点滅周期がどのように変わるのかをLEDの足の部分でオシロスコープを使って調べてみました。(細かい数字は不要なので、数値は丸めています)
発振波形は下のようになっており、やや不安定なので、オシロスコープの画面を止めて測定しています。
電圧、抵抗、コンデンサの値によって、点滅時間で、4倍程度の時間差があることから、結構、点滅周期は調節できそうなことから、これを用いて何かに応用ができそうな感じで、これも発振回路として採用できそうだ・・・ということにします。
それと同時に、Rの大きさが変わると周期が変わるのであれば、CdSセルが使える・・・と思いましたので、これに追加して、少し遊んでみました。
CdSセルを使って遊べそう
470kΩを220kΩにすると周期が変わていることから、RをCdSセルに変えてみました。
このようにCdSセルを接続すると、周囲が暗くなってくると(セルを手で覆うと)LEDが点滅しはじめて、暗くなるにつれて点滅周期が短くなっていく・・・という回路です。
この図では、CdSからアースする回路になっていますが、220kΩの下にCdSセルを直列につなぐと、どうなるでしょうか?
これはやっていませんが、頭の中でイメージすると、・・・・ 私の予想では、暗くなると、上とは逆に、点滅周期が長くなる・・・はずですが、その他の抵抗やコンデンサの値を変えることも合わせて、興味ある方はいろいろとやってみると面白いとおもいます。
文章が長くなるので深入りしませんが、このような低電圧定電流の回路では感電の危険もないし、間違って部品をオシャカにしても、安価なので、そんなに懐も痛みませんので、どんどん冒険してみてくださいね。
最後になりますが、水晶発振子について少し取り上げます。
水晶発振子を使った発振波形は正弦波=サインウェーブ
水晶発振子は、名前からは、高価でデリケートな感じがしますが、30円前後で安価ですので、気軽に使えます。
これに外力を加えて変形させると起電力が発生する性質があるのでやってみたいのですが、この作業は、かなりマニアックなので手が出せそうにありません。
もう一つの性質としては、電圧をかけると固有振動し、その振動精度が非常に高いので、時計やパソコンのクロックなど、いろいろな周波数のものがいろいろな用途に使われています。
ただし、汎用品の固有振動数はMHzのオーダーで、もちろん、音も聞こえませんし、LEDの点滅も確認できない周波数レベルですので、これは、今まで紹介した周波数の低い発振とは異なるので、本来はこのHPとしては対象外なのですが、ただ、今までの発振波形は、かなり特殊な波形でしたが、水晶発信子はきれいな正弦波で発振する・・・というのが見たかったので、少しだけ取り上げてみました。(実際に何かの回路に使おうとするなら、水晶発振子単体よりも、増幅回路などが組み合わされている「水晶発振器」を使うほうが使いやすいでしょう)
書籍にある「正弦波」の発振回路例をブレッドボードに組んでも、その他、市販の安価な発振回路のキットを組んでみても、うまくできないことが多いのですが、これは、(発振回路全般に言えることで) 組み方や部品の配置が影響する場合が多いためで、それもあって、原理図だけで細かい数値が入っていない回路図が掲載されていることが多いのでしょう。
水晶発振子は非常に安定した発信をするので、そういう不安も少ないのですが、周波数が高いことはさしおいて、ここでは、その正弦波の様子を見ていただきたいということで、水晶発振子を少しだけ取り上げます。
発振回路について
京セラさんなどのメーカーさんのデータシートを見ると、下図のように、インバータICを使って正弦波と方形波を観察できる回路が紹介されていますが、この説明にあるように、やはり、値を決めるのも大変そうです。
そこで、「我孫子おもちゃ病院」さんのHPに、「発振回路中の発振用コイルを水晶発振子に置き換えるとうまくいく・・・」という例が紹介されていましたので、その回路を参考にさせていただいて、オシロスコープで波形を見た結果を紹介します。
回路とブレッドボードに組み付けた状態は以下のとおりです。
これは10MHzの水晶発信子の場合の波形です。 水晶発振子は4MHz、8MHz、10MHzのものが手元にあったので、観察した時の「周波数とVpp(ピークツーピーク:山と谷の電圧差)」を下に示します。
もちろん、オシロスコープの水平・垂直の倍率で見え方が変わりますし、出力電圧も変わるので、ここでは、そのおおよその形だけを見てください。 8MHzと10MHzは、ほぼきれいなサインウェーブになっていました。
4MHzの波形がきれいな正弦波ではありませんが、写真のような適当なブレッドボード配線ですので、これを修正するのも難しそうですので、とりあえず、「この回路で波形がみえました・・・」ということまでにしておきます。
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以上ですが、発振回路をどのようにして電子工作に応用していくのかは別にして、低周波(周期の長い)でスイッチのような使い方で発振させようとすると、PUTを用いた発振、弛張発振、ブロック発振、タイマーICを使った発振などを用いて、周期の長い発振(ON-OFF動作)に利用できそうだということがわかってきました。
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