タイマーIC NE555P を使ってみよう
タイマーICと呼ばれるICはいろいろな種類のものが、非常に安い価格で販売されていますので、この使い方を知っていると、いろいろなところに使えるでしょう。
この中でも「555シリーズ」はタイマーICの定番と言えるもので、各社製でいろいろなよく似た型番があリます。
最近の傾向は小型化省電力化なので、小さな面実装タイプのICが増える傾向にあるのですが、電子工作に使うには、「DIP(ディップ)」というタイプであれば、ブレッドボードに直接さすか、ピンソケットを利用すると使いやすいので、ここではテキサスインスツルメント社のNE555Pという、DIP8ピンタイプのものを使います。
この「555」は、いろいろな特徴のあるものなどもあって、2回路が組み込まれた「556」などもありますが、「555」「**555」「**555**」などはほぼ同様に使えますので、入手しやすいものを使えばいいでしょう。
NE555P について
ピン配置
いろいろな回路を試すためにブレッドボードを使います。 このために、表面実装型ではなく、8ピンのリードタイプのものが使いやすく、直接ブレッドボードに挿して使用できますが、ここでは、ソケットに取り付けて使用してみます。
ブレッドボードにさして安定するように、ここでは、8ピンソケットに足を継ぎ足した細工をしました。(特にこの加工はしなくても問題ありません)
このNE555Pは、データシートでは、16Vまでの電源で使用でき、600mWの電力損失・・・とありますので、ここでは、いつもの5Vの電源を使っていくことにします。
(図1)
このタイプは、型番が違っても同じピン配列になっています。
1 グラウンド 電源の-に接続します。
2 トリガー スイッチなどでタイミングを取るための入力端子
3 出力端子 通常は電源電圧より少し低い電圧が出力されます。
4 リセット端子で、ある電圧になるまでクランドにつながります。
5 制御電圧端子。電源の2/3の基準電圧がかかる。
通常0.01μFでGNDにつなぐ。
6 5の電圧が電源の2/3以上で出力(3番ピン)がローレベルになる。
7 通常は、コンデンサの放電用端子で、出力端子と同電圧になる。
8 電源の+端子。 多くは4-15V程度でICが動作する。(要データシート確認)
用途と動作
使い方は、それぞれのメーカーのデータシートに掲載されており、この記事も、それに沿っています。
データシートにあるのと同じような回路ですが、データシートは英語なのでわかりにくいと思うので、少し説明しながらその様子をみていきます。
簡単な電子工作で使えそうな回路としては、
①トリガー端子に入力することで、方形波を出力する → タイマーとして使えそうです。
②特定の周波数で発振回路を構成する →ON-OFFの繰り返し動作
・・・ という使い方ができることで、電子工作に応用できる用途が広がりそうです。
例えば、秋月電子さんが販売している「DCモーターの回転速度を変えるキット」に、発振されて方形波のデューティー比を変える方法を使っているなど、面白い使い方ができそうです。
ここでは、電子工作に使えそうな「スイッチを入れると一定時間動作する『タイマー』的な使い方」と、定期的にON-OFFを繰り返す「点滅回路」をなどを作りながら確認してみようと思います。
タイマーとしての使い方
一般的に「タイマー」というと、設定時間になればスイッチを入れるというように、「時計」がついているイメージを持つのですが、ここでいう「タイマー」は、時計機能がなく、ある時間経過すると電流がOFFになるというような動作をさせる動作を言っています。
そのため、ここでは、スイッチを入れると、LEDが点灯して、「ある時間」経過後に消灯する・・・という動作をこのICを用いて行うというものを「タイマー」と呼んでいます。(もちろん、これが最も簡単で単純なものですが、これをもとにして複雑なことをするための基本と考えておいてください)
(図2)
タイマー用に使った回路はこのようなものです
これは、データシートなどにものっている標準的な回路です。
スイッチ(SW)を押して、②のトリガー端子の電圧がアースに流れてゼロになります。 すると、NE555の内部で固定パルスが発生して、LEDを点灯させます。
このあとCRによる充放電によって、タイマーが機能します。それは・・・
(図3)
LEDが点灯すると同時に、外部のコンデンサ(C)の充電が始まり、決められた充電電圧に達すると、内部回路で放電が開始し、一定電圧に下がると、一連動作が完了する・・・という回路です。
NE555Pの内部では、自動的に充電・放電の電圧を監視してくれているのです。
このときの「R」は、「C」に貯まる量を調節しますので、R・Cが大きいほど、タイマー時間(発振の周期)が長くなることが感覚的に理解できますね。
ブレッドボードで回路を組みました
そのタイマ時間(T)は次の関係があると説明されています。
T=1.1CR ・・・(計算式1)
Cはファラッド、Rはオームですので、例えば、C=100μF、R=100kΩとすると、T=1.1x0.0001x100000=11(秒)となります。
CRをいろいろな値に変えて実測しました
(表1)
Timeは実測したON時間で、Calc_Timeは、上の式で計算した時間です。
部品の誤差が気になったので、テスターでCRの値を測定したのですが、(この実測値も正確とは言えませんが)Calc_Timeは実測値を用いています。
ただし、結果的には、呼び値で計算しても、問題なさそうです。
もしも、「**秒にしたい」という時間であれば、CR=T/1.1 で逆算できますし、Rには半固定の可変抵抗を用いれば、もう少し細かい時間設定ができることがわかります。
ここでは、これ以外の時間での測定はしていませんが、例えば、5分や0.1秒などもC・Rを計算しておくと、その時間用の、おおよそのタイマーができそうです。
ただし、CRの回路では、クオーツなどのような安定した時間を得るのは無理ですので、「おおよその時間」と考えておきましょう。
なぜなら、実際に時間を正確に取りたいと思って可変のものを使っても、部品ごとに「呼び値」からの誤差がありますし、さらに大きな問題は、使っているうちに温度が変わるなどで誤差が生じるので、上記の計算した時間で安定して作動するということはないでしょう。
もちろん、ここでの点滅のカウントも目視計測ですし、その他の測定も適当ですが、大まかな時間保持のタイマーがCRの値を変えることで簡単にできることが確認できましたので、これは、かなり強力な武器です。
上の回路について少し補足しますと・・・
LEDの下の抵抗は、LEDの電流制限抵抗で、私は、220Ωを使いました。
②のトリガー端子のスイッチにつけた抵抗は10kΩですが、NE555Pの⑧電源と①アースを結線した状態で②トリガー端子とアース端子の電圧は0.2V程度でした。
データシートによると、NE555Pは0.01μAでトリガー操作をするようなので、この場合は 0.2V/10000Ωから、流れる電流は 20μA ですので、10kΩよりも大きい抵抗値でもいいようです。
もっと言えば、電流制限ができればいいので、5kでも500kでもいいのでしょう。
⑤のコントロール端子ですが、これを使わずに開放している回路図もあるのですが、データシートによると、変調信号を加える場合に使用する端子のようなので、開放していると、変な発振などを起こすかもしれないと考えて、0.01μFをつけてアースしています。
次に、「発振」についての利用方法を見ましょう。
NE555Pを使った基本的な発振回路
やはりこれも、データシートにも掲載されている基本的な回路です。
(記事の下の方で、データシートから引用した記事を書いていますが、それと比較していただくといいのですが、回路図の書き方が変わると、非常に違った印象があります。このようなことには慣れないといけないのかもしれません)
(図4)
そして、ブレッドボードにこの回路を組んでみました。
電源につないでみると、時間に伴って周期的にLEDが点滅します。
この点滅周期(T)は、抵抗Ra・RbとコンデンサCとの関係があって、
T=0.693C(Ra+2Rb) ・・・ (計算式2)
で求められ、また点滅時間の比(Duty比)は抵抗値のとり方で、
Duty比=(Ra+Rb)/(Ra+2Rb) ・・・ (計算式3)
になります。
そこで、次のように、Ra・Rb・Cを変えて、実測値と計算値の違いをみました。
ここでは、部品の固有値は示していませんが、そんなに正確を要するものでもありませんので、ここでは「呼び値」で表を作っています。
(表2)
結果は「たまたま」かどうかわかりませんが、ほぼ計算値に近い値になっています。
このRa・Rb・Cについては、RもCも、大きくなればトータル周期時間が長くなることがわかります。
データシートの例での発振をもう少しみてみましょう
「555」シリーズにはいろいろな型番のICがあります。 それぞれに何らかの優位性を生かして製品化されているのでしょうが、データシートが英語で書かれているものが多くてわかりにくいのですが、もう少しNE555のデータシートをみてみることにします。
私の手元にFAIRCHILD社、STM社、JRC社などのデータシートがあります。
その「555」についての特徴を表現した文言は若干異なるのですが、「遅延時間が短い」「生成周波数範囲が大きい」「非安定・単安定で使える」「高出力電流」「デューティ比調整」「温度安定性」「タイマー時間の長さ」等・・・とあっても、これらは私の技量レベルでは十分理解できていません。
ただ、ここで使ったNE555Pは、安価で使いやすく、汎用性と市場性がいいので使っているだけです。
ここでは、データシートに沿って、周波数を変えて発振の状況を調べてみたいと思います。
データシートの例で回路を組んで見る(STM社のデータシートより)
(データシート1)
上で紹介したのと同じような回路です。ここには、R1、R2、C1と発振周期の関係が示されています。
(データシート2)
簡単に言えば、RとCの値を変えれば、幅広い周波数の発振をさせることができそうです。
データシートには、デューティ比が50%の場合の、R・Cを入れた例が掲載されています。
(データシート3)
この回路を実際に組んでみました。 そしてさらに、RA、RB、Cの値を変えて実測値と計算値並びに波形の様子を見てみました。
この回路図の通りでは、1400Hz程度の方形波が規則正しい、きれいな波になっています。(写真はありません)
上の写真は、Cを0.1μFにしたものですが、規則的なきれいな方形波が出ています。
そのように、RA/RB/Cで、どれか1つの値を変えたときに周波数などがどうなるのかをみてました。
下表がその結果です。 実際には測定中に数値が少し変動しますが、大まかに見てください。
(表3)
実測した周波数は、計算とは少し異なっていますが、この表からは、データシート1・2のように、R・Cで変化していることがわかります。
(Photo1)R1=200k
(Photo2)R2=20k
(Photo3)R2=10k
(Photo4)R2=25k
Rを変えるとDuty比が変わります。
Cについても、Cの値を変える周波数が変化します。
この波形の違いを音や光などで比べてみると、面白いかもしれません。(同じような周波数比較をこちらのページでやっています)
また、R1を33kΩにすると発振しませんでした。 この理由については、R1はR2より大きくしないといけない・・・とデータシートにかんたんに触れられています。
さらに、測定中にノイズによって、特にピークトゥピーク値がかなり変動して、値の読み取りがいいかげんになりました。
これは、ブレッドボードに組んだ回路ですので、部品の足も長いままですし、ノイズ対策もしていませんので、どうも、ノイズを拾っているようです。
実際に回路を組む場合は、ノイズ問題は重要ですので、実際の回路を組むときに考えないといけないのですが、ここでは検討せずにスルーします。
このように、NE555Pの回路の基本的なものがデータシートに掲載されていますので、それを基本に利用すると簡単で安心できます。
以上がNE555PタイマーICの基本的で電子工作に使えそうな「タイマー」「発振」の説明ですが、こちらのページでも、もう少し系統的にC・Rを変えたときの様子をみていますので、良ければあわせてご覧ください。
また、R・Cなどの測定に、キットで作った安価なLCRテスターを使っています。 これは安価ですし結構使えますので、これから電子工作をやろうとしている方は、ハンダ付けの練習にもなりますので、Amazonなどのページをチェックしてみてください。(→組み立ての記事はこちら)
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