エレキギターのようなしくみの楽器を作ってみる
エレキギターは弦の振動を電気的に取り出し、それを増幅して音を出しているので、極端に言えば、アコースティックギターのような共鳴のための胴部は不要ですから、ギターのようなものを作って音の出る様子を確かめてみましょう。
ここでは、「ギターもどきの楽器本体」、振動を拾う「ピックアップ」、「かんたんなアンプ」で音を鳴らしてみよう・・・というのが今回の工作の内容です。
もっとも、私自身が音楽のプロでも楽器のプロでもないので本格的なものではありませんし、これと同じものを皆さんに作っていただきたいと考えているものではなく、音を出すための考え方や過程を書いているだけですので、これらをヒントにしてオリジナルな楽器を作って発展させていただきたいと思います。
今回作ったのは、写真の真ん中の「棒」のような単純な形状のものです。 上の普通のギターやミニギターに比べると貧弱なようですが、工作すると結構楽しめます。
今回作った楽器
ここではいろいろなことを考えながら、寄り道しながら作っていきます。
最初は音の出る仕組みを確認するために、ホームセンターで購入した材木を使って1弦のギターを作ります。(最終的には弦を増やす予定ですが、1弦で音を出すまでを紹介します)
ピックアップとアンプも自作します。 これらについても後に紹介します。
使った部品類
本体用
木材 25x40x1800(松材) 298円で購入、スチール弦 1E (市販のフォーク弦、エレキ用の弦がいいでしょう。購入しても1本200円程度です) 、 糸巻き 手持ち品を利用(新品を購入する場合でも、1000円以下で入手できます)、小さなアングル(隅固定用のL字金具。2個で158円を購入。最終これは使わなくなりました)、フレット用の針金 2.5mmアルミ線+1.5mm樹脂巻き鉄線、8mm丸シール
ピックアップ用
鉄釘+超強力マグネト6mm(100均で8個100円)+0.16mmポリウレタン銅線(100g970円)
工具等
10.5mm木工ドリル(480円で購入)、 金切り鋸+ヤスリ(100均で購入)、 瞬間接着剤など・・・
ギター・ピックアップなどの加工
ギター本体
上の写真で、上が普通のギターのサイズで、下がミニギターですが、今回作るのは、弦の振動を電気的な振動に変えるために、共鳴構造が不要なことからネックの部位だけのものにしました。
弦は導電性のあるものが必須で、ナイロン弦は使えません。 ここでは、手元にあったフォークギター用の市販のスチール弦(材質はピアノ鋼線)の「お古」を使い、糸巻き部分も、壊れた糸巻きの使えそうなところを加工して使っています。
全長はミニギターより少し大きい程度にしたのですが、この材料は約40mmx30mmx1800mmの松材を、上の写真のように、適当な長さに切って使いました。
今回は、楽器の仕組みを考えるだけなので安い木材を使ったのですが、写真の通常のギターのネックの実寸の幅が50mmですので、少し太い材料で4~6弦のものを作ったほうが実用的で楽しいかもしれません。
これらの穴をあけるのに、最初は手持ちの金属ドリルを用いていましたが、10.5mmの木工用ドリルを購入して加工すると、かんたんにきれいな穴が加工できますし、糸巻き部分の長穴も、それで簡単に加工できたことにびっくりしました。
ここでは、ピックアップ用の穴を3つあけていますが、1弦ギターで説明しますので、残りの2つの穴は使用していません。
この部分については、いろいろな検討が必要な部分ですので、この通りにしないほうがいいでしょう。(後で説明しています)
糸巻き・弦
ここでは手持ちの壊れた糸巻きを使いましたが、このような糸巻きは意外に安価ですので、広幅の材料を使って、6弦の実用的なギターネックを加工するのも楽しいでしょう。アマゾンの安価なものの例です。
Amazonの商品例
使用した弦はフォークギター用のスチール弦(1・E)ですが、新しく購入する場合はエレキギター用の弦を使用すると安心でしょう。
その他では、弦を止める金具は写真のようなアングルを使用したのですが、この穴に弦を入れると9mmの高さで、これは若干高い位置なので、最終的にはこれは取り外しました。
この高さは弾きやすさや調弦のときのフレット位置に影響します。 7.5~8mm程度が良さそうですが、これはこのままで進めましたが、私の最終形も参考にして考えるといいでしょう。
フレットの加工
2種類の太さの線(ここでは2.5mmと1.5mm)を用意して、まっすぐに伸ばしてから幅に合わせて適当な長さに切って木材に貼り付けるのですが、全長の半分の長さの位置が「オクターブ」になるはずなのですが、弦を押さえて音を出すので、その張力が加わり、微妙に音程がずれるため、ギター用のチューナーを使ってフレット位置を調整しました。
そのために、ここでは、ギター用のチューナーを使って、弾いた音を拾いながらフラットの位置を決めました。
机の上において弦を弾くと、結構共鳴して大きな音が出ます。
自分の音感でもいいのですが、私は下の手持ちのチューナーを使って音を合わせました。
このチューナーも過去に1500円程度で購入したもので、これがあるといろいろなところで利用できます。
例えば、ハーモニカのベンディング(半音ほど下げて音に変化をつける奏法)の音程の状態を見たり、写真のような水道パイプのパンフルートを作ったときの音合わせ・・・などに使ったのですが、1つ持っていると結構便利ですので、楽器演奏や音楽好きな方は購入を検討してみるのもいいかもしれません。
チューナーを使って音合わせしながらフレットの位置を決めて、それを瞬間接着剤で固定します。
もちろん、高音側に順番にフレット間隔が狭まっていきますし、弦の長さが半分になるとオクターブの音になるはずですが、弦を押さえると音が変わりますので、ともかく、チューナーを基準にフレット位置を決めました。
しかし、これはこれで音が合っていますので問題ありませんが、Lアングルの穴の位置や2.5mmの根元のフレットの高さなどが関係します。
引きやすさを考えて、弦を弾く部分を削り込むことなどや弦の貼り方については、検討の余地があります。(後日、全面改造しましたから・・・)
ここではまず、フレットを押さえないでA3(ラ)~E4(ミ)程度の音になるように弦を張って、それからフレットを貼りつけていくといいでしょう。私はC4で合わせました。
ピックアップの加工
ピックアップは、弦が振動することで永久磁石から出る磁力線を切ると、コイルの中に電流が流れて音としての変化を検出できる・・・という原理です。
ここでは、鉄釘を適当な長さに切って、釘の頭に永久磁石を貼り付け、細い銅線を巻きつけてコイルを作りました。
この状態でLCメータを使って測定すると、直流抵抗9.3Ω、インダクタンス3.7mHでした。
後日、下のような形状のコイルを作ったのですが、①高さを短く、 ②密集してコイルを巻く・・・というのが良さそうで、コイルから鉄心が飛び出しているのも良くないようで、長いコイルは音が小さいという結果になりました。
ちなみに、両方のコイルともに同じ材料で、500回ずつ巻いたつもりですが、長い方のコイルは7.5Ω 3mHになっています。
この両端をアンプに接続して弦に近づけて弦を弾くと音が出ます。
ただ、このピックアップをたくさん作るのは大変だ・・・という方は、市販のピックアップを利用するのもいいかもしれません。
市販品は、確実に音を拾うように2個のコイルを使うようになっているなど、色々考えられているようです。
工作にはなりませんが、下の例のように、結構安いですし・・・。 ただ、これらを購入品の場合は、取り付け方法や配置場所を考えてネックを設計してくださいね。
2個以上のピックアップは、コイルを直列につないでいきます。
ただ、複数のピックアップを作る際には、磁石のN・Sをあわせたり、巻数を揃えて、さらに、細い線を結線するのは大変ですので、私もこれを自分で作ってみて、ピックアップは安価な市販品を探すほうがいいと思ったのですが、全て自作したい方は、是非挑戦してください。
次は、音を出すためのアンプについて説明します。
アンプの製作
適当なアンプがあれば、それを利用するといいでしょう。アンプのAUX端子などにコイルの両端を接続します。
ここでは以前に別のページで作ったアンプを転用しました。音の確認用だけなのでそれを使用しましたが、これを簡単に紹介します。
これはコンデンサマイクの使い方を見るためにオーディオ用オペアンプ(NJM386BD)をつかって作ったアンプで、もちろん、大きな音は出せませんが、このようなものを1つ作っておくと、いろいろなところで確認用として使用できます。
ここでは、そのページで紹介したものを少しだけアレンジして、8Ωのスピーガーがブラブラしていたので、ユニバーサル基板の裏側にマイクロスピーカを固定しました。
裏にスピーカを固定
この入力端子に製作したピックアップコイルの両端をつなぎます。
音を出してみましょう
スピーカが小さいので、音はいま一つですが、それなりの音がします。
ギター本体の穴に製作したピックアップを差し込んで、弦とピックアップ上端との隙間を決めてピックアップを固定しますが、最大音を出したときに弦に触れないように位置を決めて弦を弾くと、うまく音が出ます。(ただし、固定の仕方に問題が出てきます)
私のギターの場合は、開放弦で隙間が約5mmで、最高音のときの弦とピックアップの隙間は3mm程度になっていますが、そこそこうまく音が出ます。 ・・・ ともかくは「成功」です。
【注】このギターは完成形でないので、弦を増やしたときには、弦の高さやピックアップ位置の調整が必要で、そうすると、フレットを設定し直す必要がありそう・・・などの問題も出てきます。 実際に、私は当初、2弦のものを作ろうと思っていましたが、結局、4弦にしました。 ここでは、作り方手順や考え方を示しましたので、それを参考に、アレンジして作っていただく必要があるでしょう。
その後の経過と問題点など
最終形は、4弦にしました
1E・2B・3G・4D の4弦を張って、フレットは全部作り直し、調律も全部やり直しました。ウクレレのような感じです。
フレットから弦が離れすぎると問題なので、弦を止める方法を変更しました。また、弦は釘を打ち込んで止めています。
これでもまだまだ改良しなければならない点があります。
ここでは、ピックアップコイルで音を拾ってアンプに通すと「音が鳴る」というのを確認できたのですが、自作のピックアップをうまく固定できないことや、各弦を単独のピックアップで拾わないといけないこと、ピックアップ部分(弦を弾くところ)の「ふところ」が狭く、弾きにくいこと・・・・など、問題点がたくさんあります。
結論的には、「使えるエレキギター」とするにはまだまだですが、弦を緩めに張って、机などで共鳴させて、「ビヨーン~」という音を出すと、なんとも言えない「味」があり、音を楽しみながら弾いています。
こういうものを作ってみると、「市販の楽器はうまくできているなぁ」と感心するのですが、自分で作ってみないとこの感慨は感じることができないと思いますので、これを真似するのではなく、このような何かの楽器を作ってみたら結構楽しいですよ。
PR






その他の私の記事の紹介

鋼の熱処理・焼入れは、専門的で難しそうですが、鋼種や基本のポイントを押さえれば家庭のガスコンロで焼入れができます。金のこをナイフに加工して、それを熱処理しながら方法や熱処理理論などを説明しています。

大阪市には8か所渡船が運行しています。全工程の地図と渡船の時刻表をつけています。歩く距離は15kmほどで、乗船は無料。自転車も乗船OKですので、季節のいい時にトライしてはどうでしょう。

焼入れして硬くできるマルテンサイト系ステンレス鋼は、カスタムナイフの材料として人気があるのですが、熱処理の仕方や熱処理による性質がわかりにくいという声を聞きます。それらについて説明しています。

宇治川から淀川になった京都府八幡市付近から流域約38kmを3回に分けて河口までを歩きました。

わたしの話し言葉は生粋ではありませんが大阪弁です。あるいは長年住み着いた「河内弁」が強いのですが、年々消えゆく「大阪ことば」をいくつか集めて録音しています。

私のすべての記事のINDEXページです。